第16話
ひょっとしたら、探索者になって以来初めて、死を感じているかもしれない。いやそんなわけないけど。
ともかく、俺は今、レベルが100倍以上上の相手に剣を向けられていた。
久しぶりの学校は、まあこれと言って言うこともなかった。うるさい奴もいたし、面白そうなのもいたが、ダンジョンほどではない。
それに俺には今日、とても重要な用事があるのだ。
「やっほー!迎えに来たよー」
黒塗りのリムジンから顔を出して赤城さんが言う。
にしても、校門の前にリムジン横付けって。いや別にいいけど。どうせ貴族に文句言える奴いないし。
にしても中広いな。外から見てわかってたけど、この広さをこの人数って贅沢すぎる。トイレもあるし、ソファーもテーブルもある。テレビまであるし、キャンピングカーかな?
「冷蔵庫の中にジュースも入ってるし、机のお菓子も好きに食べていいからね」
おー!あなたが神か?いや聖女だったわ。
うわー、これめっちゃ高いやつじゃん。オレンジジュースのくせに一本数万するやつ。
あ、缶のコーラもある。
「それで、そちらの方は?」
手元から、プシュッと音を立てながら尋ねる。あ、溢れる溢れる。
「わたくし、白木家家令の仁科と申します。以後、お見知りおきください」
これはご丁寧に。黒を基調にしたびっちりとしたフォーマルな服装や、座っている白木さんたちに対して立っていることからも召使かなんかであろうことは推測できたけど、にしても。
「家令って、確か、貴族の家の使用人でも一番上の人ですよね。こんなとこにいていいんですか?」
「大切なお客様のお迎えですから」
なるほどね。聖女のスキルのことも知ってるんだな。
とりあえず、溢れ出るコーラに口で蓋をした。
うん、手遅れ。
「へー、じゃあ仁科さんは白木さんと赤城さんが赤ちゃんの頃から知ってるんですね」
「ええ、この家で働き始めて30年は経つものですから」
「仁科さんは、ウチで働く前は探索者をやってたんだよ」
「素手でオーガ殴り倒してたんだってー」
いがーい。そんなふうに見えなー、いや、見えるな。
なぜか移動する車内でも直立不動を維持してるし、30年召使やってて、その前は探索者ってもう結構いい年のはずなのに全然若々しいもんな。
レベルの高い探索者にありがちな不老か。
「昔の話ですよ」
今でも十分強そうですがね。
それからも、雑談をしながら車に揺られていた。そして、関所を四つくらい超えてようやく到着した。
にしても、家がでかい。やたらでかい。うちの高校よりでかいぞこれ。
「ご当主様方は奥でお待ちです」
こちらにどうぞ、という仁科さんの案内に従って長い廊下を右往左往。にしてもこれあれだな、開かずの部屋とかありそう。その辺のランプとか押したら秘密の部屋とか出てこないかな。
「こちらです」
そう言って仁科さんが扉を開ける。その扉もでかい。全部でけえなここ。
「初めまして、現白木家当主、
「赤城家当主、
なるほど、この人ら強そうだな。なんとなく肌をピリピリした感覚が貫く。別にこの人たちは俺に対して悪意を持ってないだろうに。ただ前に立っただけでこれだもんな。ほんと、笑っちゃうわ。
「私たちから、改めて礼を言わせてほしい」
「娘たちを助けてくれて、本当にありがとう」
そう言って、2人が揃って頭を下げる。やっぱり親子だからか、挙動が似てるな。
さて、そのちょっと後、
「いやー君は好青年だなあ。うちの娘が気にいるのも分かる」
「ちょっと!やめてよパパ」
だいぶ打ち解けた感あるな。にしても、赤城さん、パパ呼びなんだな。
「浩さんと拓人さんは、一緒にチームを組んで探索者をやってたんですよね」
「おう、拓人と俺は昔からの知り合いでな。家同士のつながりも深いから一緒に行動する機会も多かったんだ」
「それで、高校の時に一緒に探索者になることにしたんだ。ちょうど、今の圭たちみたいにね」
「父さんたちは、中々の探索者で、上級ダンジョンに入れる程度には強いんだよ」
上級に入れるってことは、レベルも1000くらいはありそうだな。
「さてどうだろう、娘と一緒にダンジョンに入る君の実力も見ておきたいし、一つ手合わせと行かないか?」
ふむ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます