第14話
全身から光を放ちながら、煌びやかな鎧を纏った探索者が大槌でドラゴンの顎を振り抜いた。
『おーっと、ここで
『トールハンマーはミスリルゴーレムすら一撃で屠りますからね。アレがまともに入ってはいかに最強のドラゴンといえどキツイはずです』
今テレビでやっているのは、探索者が出てるバラエティ番組だ。毎回探索者を呼んで、チームに分かれて戦ったり、トップ探索者にインタビューしてみたり、芸能人が探索者になってみたり、そういうかんじの。
最近は人対人より人対モンスターのチーム対抗のタイムアタックのほうを推しているらしい。昔は対人戦もあったが、いまは対モンスターばっかりだ。テレビでは、ダンジョンの最奥にいるボスモンスターとチーム毎に戦い、そのタイムを競っている。
「これ、さすがに本気じゃないよね?」
「もちろん。彼らが本気を出したらドラゴン程度なら、1分もかからないでしょうね」
まあそりゃ、そうか。別にドラゴンは弱いモンスターじゃないけど、今画面に写っている人物を相手にするにはちょっと足りなすぎる。
「あんなのがトールハンマーだなんて。笑わせるわ」
「
「ええ、上級ダンジョンに何クランか合同で行ったときにね。向こうが覚えてるかは知らないけど」
上級ダンジョンねえ。だいぶ遠い話だ。
「あの時は本物のトールハンマーも使っていたけど、ボス以外を相手には過剰火力だったわ。さっきのあれは、常時発動の自己強化だけの魅せる用の技だと思う。…いえ、多分技ですらないわね」
ふーん、まあドラゴンはレベル200あれば倒せるって言われてるしな。200どころかその5倍はあってもおかしくないトップ探索者様からしたら余裕か。
「本気で殴ったら原型とどめてなさそうだもんなあ。…お、来た来た」
テレビの中では、討伐されたドラゴンの前で、視聴者に向けて探索者たちが手を振っていた。
そして、画面が切り替わり、また別の探索者のチームが出てくる。そこには今俺の傍にいる少女も居る。
そう、光耀の皆さんだ。リーダーさんは流石にいないが、リーダー以外も光耀の面子は有名人揃いだ。
テレビ越しに会場が沸いてるのが聞こえる。
「大人気じゃん」
「歓声は後付けだけどね」
だそうです。
最近こういう探索者にフィーチャーした番組が露骨に増えているんだよなあ。
なんか大人の事情が見えますわ。
ちなみに出演している探索者の皆さんも当然色々目的がある。金に困っていないだろう彼らだが、金以外にも顔を売るためだとか、スポンサーの意向だとかで縛られている。
どれだけ強くなっても、人間は社会的生物にすぎないのである。
ちなみに詩織がこう言う番組に出ているのはこの番組が国営だからだ。
顔よし、スタイルよし、スキルよし、ステータスよしと何拍子も揃っている彼女は、平民出身であることも相まってアイドル的人気を誇っている。こう言う番組でも引っ張りだこだし。
テレビでは彼女の魔法がドラゴンの下半身を氷漬けにしていた。
「すごいなー」
「別にこれくらい普通よ。やろうと思えば内側から凍らせて一撃で殺せたのに、演出がどうこうで止められたのよ」
はー。彼女からしたら手加減した一撃でも、天変地異である。彼女くらい大規模の魔法を使えるようになるには俺の今のステータスの伸びだとレベル2000くらいないと厳しそう。
まあそもそも魔法系のスキルがいるんだけど。
さて、画面の中ではドラゴンが氷漬けになった下半身にブレスを吐いて溶かしたところだった。
「にしても翼広げるとデカいなあドラゴン」
「生で見るともっと大きく感じるわよ。アレ一頭でビル一つ分くらいあるもの」
うへえ。空を飛ぶドラゴンだが、下半身の焼け爛れた部分を攻撃されて痛そうにしている。
火に耐性があるドラゴンがあんな深い火傷しなきゃ溶かせない氷ってやばいな。
ドラゴンって卵生だし冷やしまくったら冬眠したりするんだろうか。
その後、順調にドラゴンは討伐された。
「お、ヒーローインタビューじゃん」
いや、女子ならヒロインインタビューか?
タイムアタックで勝利した側の代表として、詩織がインタビューを受けていた。
「紅茶とコーヒー、どっちがいい?」
「ココアがいい」
「そう言うと思って入れておいたわ」
そう言ってコップを持ってくる。なぜバレたし。未来視か?
「あなたいっつも、選択肢の外選ぼうとするじゃない」
「まさか俺が読み負けるとは…」
ちなみに今日は詩織の家に邪魔している。さすが人気探索者、家が広い、デカい、高い。
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