第13話
「じゃあ、私から発表しようかな」
白木さんが言う。
「私の新しいスキルは、結界って名前で、相手の攻撃を防ぐバリアを出せるよ。色とか、形とかは自由に変えられるみたい」
そう言って目の前に結界を出す。なるほど、デフォルトの状態だと透明らしい。触れることができて、大体1メートルちょっとの正方形だった。
複数同時に出すこともできるらしく、球状のシャボン玉みたいなのとか、星形とか、いろいろ出していた。
多分このバリアは厚さが0で、表面積と硬さに消費するmpとかが依存してそう。
「白木さん、地面に水平に出せる?」
「できるよー」
そう言って色付きで地面から50センチくらいの高さに出してくれる。
「よっ」
掛け声と共に結界に飛び乗る。やっぱりこの程度の衝撃じゃ割れないのか。
勢いよくぶつかって割れないなら足場としても使えそうだなあ。
「ありがとう」
礼だけ言って考える。多分ゴブリン程度ではこの結界は割れない。ブルーゴブリンでも一撃で割れるかどうか。
一番の問題は彼女がレベル5であることだ。
…やっぱ聖女ってやべぇわ。
「はーい、次私ねー」
そう言って赤城さんが前に出る。
とその時、ゴブリンが何体か現れたので、先に指定した場所に結界を出してもらっておいて、3次元立体機動を試した。
相当使えるな、これ。ミスったら首もげそうだけど。
「じゃー気を取り直して。私の新しいスキルはねー、以心伝心って名前で」
『言葉なしで会話できるスキルだよ』
赤城さんの声が、頭の中に響いた。彼女は口をうごしていないのに。
「私たちから返すこともできるの?」
「できるはずだよー」
『聞こえる?』
「2人とも、聞こえてるよー」
白木さんと目が合う。どうやら同じタイミングで試してたみたいだ。
「めちゃくちゃ便利じゃん。電話代かかんないし」
「かわりにmp取られるけどねー。一時間あたり1とかだけど。あと、私が信頼してる相手としか話せないから、そんな便利じゃないよー」
信頼してる相手としか繋げないのか。じゃあ人類全員の脳内に呼びかけるとかできないんだ。
「圭、それって、どこまで聞こえてるの?」
「うーん、多分伝えようとする意思がないと伝わらない系だと思うから、プライバシーとかの心配はしなくていいんじゃない?そっちだって、私の脳内見えないっしょ」
ふーん、まあ彼女はガーディアンだし、多分問答無用で心を読んだりできるスキルにはならなそうだけど。一応留意しとくか。
と、またもちょうど良いところにゴブリンが来たので、今度は声に出さずに会話しながら連携をとる練習をした。
どうやら以心伝心は、彼女以外の彼女と話している者同士で会話することも可能らしく、3人とも相互に話せるようになった。
これがあると、だいぶ戦闘が楽になりそうだなあ。音が届くのを待つ必要も口を動かす必要もないから、声出すよりも圧倒的に早いし。
「さて、じゃあ最後は俺のスキルかな」
「よっ!待ってました!」
赤城さんが合いの手を入れてくれる。
「待たれるほどのスキルじゃないけどなあ。2人に比べたらとてもとても」
「そんなことないよ!」
白木さんが否定する。なんか期待されているけど、多分その期待には添えないよ。
「まあ、とりあえず見せたほうが早いか」
そう言って、スキルを使う。
「俺の二つ目のスキルは分身。実体がない分身を作れる。攻撃が当たると消えるし、実体ないから攻撃も何もできないけどね。それ以外の効果もないし」
白木さんも、赤城さんも驚いた顔をしていた。
なんか2人だけで話してそうだな。会話の内容は多分、俺のことだろうか。
「ごめんなさい、2人だけで話しちゃってて」
白木さんが口を開いた。
「私たちは、あなたがもっと強力なスキルを持っていて私たちを助けてくれたんだと思ってたの。だからレッドキャップにも勝てたんだと」
「がっかりした?」
白木さんも赤城さんも揃って首を振った。
「逆だよむしろ。私たちは君が強いスキルを持ってて、だから助けに入ってくれたんだと思ってた。でも違った。君は、私たちと変わらなかった」
「つまりあの赤い悪魔は、あなたにとっても遥かに格上の相手だった。なのにそんな相手にあなたは立ち向かってくれた。そんなこと、普通はできない。あなたは私たちより、ずっと強かった」
「だから、君に改めて感謝を伝えたいの」
「あの時私たちを助けてくれて」
「あのモンスターを倒してくれて」
「「ありがとう」」
「私たち、2人で話し合って決めたんだ」
「あなたに危険が訪れたら、今度は私たちが全力で助けるって」
「だから、困ったことがあったら遠慮なく頼ってね?」
そういう、2人からの感謝と、決意表明を聞いて俺が思ったのは、なんかやっぱ聖女とガーディアンって感じだなーと言う感想だった。
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