第12話
「クラン光耀のリーダーとはどういう関係なの?」
さて、どう答えるべきかな。
とりあえず、未来視について言うのは無しだ。
彼女達個人に浜匙花との確執があるなら話は別だけど、そんなことないだろ。
聖女である以上、彼女達と浜匙花は対立しないだろうから、話すことにメリットは無さそうだ。
「この前一回会ったきりだよ。無免でダンジョンに入った件で呼び出されたんだ」
「なぜそれが、彼女と会うことに?」
「探索者じゃないのにダンジョンに入るのはアウトだったみたいで、取り押さえられそうになってたらしくてさ。俺の友達が光耀のメンバーで、俺がダンジョンに入っても文句言われないように計らってくれたんだ。その繋がりじゃない?」
実際は未来視でなんか見えたんだろうけど、俺が知っている事実はこれだけだからな。
「じゃあ、もう一つだけ。あなたは、誰の味方ですか?」
誰の味方、ねえ。
「うーん、強いて言うなら、俺が味方したい相手の味方かな」
「そう、なんだ」
「確認したいことは、確認できた?」
「うん、ありがとう」
「ひゃー、終わったー」
赤城さんと白木さんが緊張の糸が切れたかのようにへたり込む。
「一方的に質問しちゃってごめんね。でも、一緒にダンジョンに入るなら、聞いておかなきゃいけなかったから」
「それは別にいいけど、別に俺に聞かなくても、調べたんじゃないの?」
「聖女のスキルの効果でね、話してる相手の嘘がわかるの。ごめんなさい、隠し事ばっかりで」
ふーん。ま、そんなことだろうと思った。
「でも、君があの女の味方じゃなくて良かったよー。流石に、命の恩人とは敵対したくないもんねー」
怖い話だ。にしても、敵対ねえ。穏やかじゃないな。
別に表立って殺し合いしたりしてるわけではないが、そもそも探索者上がりの人間と、根っからの貴族は仲が悪い。
彼女達自身がどうとかではなく、家の都合なんだろうな。
「じゃあ、いろいろ詰めときたいんだけど…」
それからの話し合いで、どうダンジョンに臨むのかを決めた。彼女達は最高学年だから、もう少ししたら学校に行かなくて良くなるらしい。
だから、そうなればずっとダンジョンに潜っていられるな。
彼女達にも強くなる理由はありそうだし、その辺については彼女たちのお宅にお伺いした時に聞けばいいや。
とりあえずこれからはなるべく長くダンジョンに入ることに決まった。
「右の二体任せた」
そう言い放って、通路の左側のゴブリン三匹を殺しに行く。
俺たちは喫茶店を出て、そのままの足でダンジョンに向かった。装備とかあるのかと思ったら、家の人に届けてもらっていた。
ほんとに執事っているんだなあ。初めて見た。かなり強そうだったなあ、あの人。
「ゴブゥ!ゴブゴバ!」
ゴブリンが吠えているが、奴らの攻撃は掠りもしない。レベルが上がってステータスも上昇した以上、ゴブリン程度に今更苦戦しない。
さっさとゴブリンどもを殺し終える。
さて、普通なら加勢に行くところだが、必要なさそうだな。
「ホーリージャベリン!」
「プライドオブガーディアン!」
白木さんが光の槍を顕現させて、ゴブリンの胴を貫き、赤城さんの一撃がゴブリンの身体を二つに分ける。
一撃一殺ですか。強すぎだろ。
「…慣らしは要らなそうだね」
次行ってみよう!
さて、そこから俺はゴブリンを周囲から集めてきて、彼女達に戦わせた。
手早くレベルを上げさせるにはこれが効率良さそうだからな。
そして今現在、彼女達は床にへたり込んで休憩していた。
「もうむりー」
「さすがに、つかれた、かな」
めちゃくちゃ怠そうにしている。さっきまでは肩で息をしてたので、これでもマシになった方だ。
「おつかれー、意外と頑張ったね」
もっと早くへばるかと思ってた。
「そういう、君は、元気、そうだね!」
「俺はちょこちょこしながら適当に間引きしてただけだからね」
「それにしても元気すぎだよー。なにか秘訣とかあるの?」
「無駄な動きはなるべく削るようにすれば、だいぶ楽になるんじゃない?できるかはわかんないけどね」
そう笑いながら言うと、キレる気力もないのか、彼女達は項垂れた。
「ま、まあ私たちもレベルも上がってスキルも出たもんね。頑張ってるよ。ね、麻依?」
「う、うん、そうだよね」
まあ、もうちょっと頑張って欲しいところでもあるけどね。
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