第10話
昨日の誰かさんとの会話のせいで学校に行っている暇はなくなってしまった。
モラモラの実のモラトリアム人間である俺としても猶予期間がいつまであるか分からない現状、早く何かしらの対抗手段を手に入れる必要がある。
幸いにも詩織を通じて学校に交渉してもらったおかげで課題をやって定期テストで点を取っていれば、いい感じに出席つけて留年とかにならないようにしてくれるらしい。まあ成績は最低になるのを覚悟しろと言われたが。
そんなこんなで後顧の憂いは無くなったのでレベル上げのためにダンジョンに来ていた。
適当にゴブリンを殺しながら、二階層の階段を探す。このダンジョンは初心者用なので、多くの人が出入りする。なので地図も公開されていて、当然頭に入れて来ている。
そして、二階層も素通りして三階層も素通り。四階層まで降りてきた。
四階層に出るモンスターはゴブリンではない。
人と同じくらいの背丈、ゴブリンとは比べ物にならないステータス。手に武器を持っていて青色の肌をしている。
そう、ブルーゴブリンである。
「ゴブゴブゥ!」
あ、鳴き声は変わらないんだ。
ブルーゴブリンは弱そうな鳴き声に反して、そこそこ強かった。一体ならともかく、二体以上が相手になるとスキルを使わなきゃ勝てないくらいに。
俺のステータスが低いこともあるし、そもそもブルーゴブリンの推奨討伐レベルは5だからしょうがない。
休憩を挟みつつ、最低限のスキル使用を心がけて殺していく。
結局昼までに200体ほどしか殺せなかった。
昼になって、ダンジョンを出て適当に食事を取った後、待ち合わせ場所に向かう。
「お待たせ、待った?」
「今来たとこだよ!」
「待たされたよー。20分くらいかな?」
「ちょっと、圭」
「冗談だよー。もう、麻依は真面目なんだから」
今日は彼女たちと会う予定があった。もともと近いうちに会って話そうという話はあった。それを早めてもらった。
平日の彼女たちは、高校からそのまま来たのか制服姿だった。
そのまま、場所を変える。どこへ行くかは彼女たちに任せていたので俺は知らない。
いろいろ曲がって奥まったところに入ると、一つの喫茶店に入った。隠れ家的なんとかみたいなやつかな?
中へ入ると何を言わずとも奥の個室へ案内された。
「ここはウチの親愛用の会員制の喫茶店なんだよ!個室で防音性もあるから密談にぴったり!」
ふーん。さすがに権力者なだけあるな。
さて、雑談もほどほどに、本題に入ろうか。
「レッドキャップの件なんだけど、無事に隠蔽されたよ。でも、良かったの?一階層にあんなモンスターが出て、それを早期討伐したってなったら報奨金を貰えてもおかしくないし、探索者協会も試験の結果を見直したかもしれないのに」
レッドキャップに関する事件は隠蔽された。知っているのはあそこにいた俺と彼女達と彼女達のクラスメイトとその親。あとはあそこにいた職員だけだ。
逃げ出したクラスメイト君たちの親は、彼らの不祥事を隠蔽したがった。まあ情状酌量の余地ありとはいえ、敵前逃亡は大罪、それも仲間を囮にしてとなったらな。
とはいえ彼らの親も彼女達の親と同じく上級国民。隠蔽に応じてくれというお願いに対して、彼女達は俺の判断に従うと言ってくれたので受けることにした。
結構強請れそうだったのだが、聖女様達の前でそんなことするわけにもいかなかったのでやめた。
「あんまり大ごとにしちゃうと、俺がやってることも問題視されかねないしね。その後、彼らとはどうなの?」
「謝罪されたから、受け入れたけど、それだけかな」
「なんか探索者やめたらしいよー。資格返納して」
へー。勿体無いな。レベルは上げ得なんだから探索者だけでも続けりゃいいのに。それとも、ケジメのつもりかな?
「それと、ウチの親が君に会いたいらしくてさ。ぜひお礼したいから予定の空いてる日を教えてもらえないかって」
「私の親も言ってたよ。ぜひお礼させてくれーって」
それはこちらからお願いしたいくらいだな。有力者とのコネは是非とも欲しい。
「いつでも大丈夫ですって伝えといてくれる?平日でも休日でも」
「分かった、伝えとくね」
まあ、ここまでは前座だ。
「それで、私たちからの提案は考えてもらえた?」
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