第7話

 レッドキャップは、一つの指輪をドロップした。レアモンスターであるレッドキャップのドロップアイテムだ。その効果も期待できる。

 ダンジョンでこういう効果のわからないアイテムがドロップしたとき、その効果を確かめる方法は2つある。使うか、スキルやアイテムで調べるかだ。

 使うのは論外なので、とりあえずポケットにしまっておく。チャック付きのポケットなので安心安全ですわ。

 レベルが上がった感覚もあるし、これでいいアイテムだったら言うことなしなんだが。


「あの!助けてくださってありがとうございました!」


 レッドキャップに襲われていた2人が、近づいてきた。


「いえいえー、ただ通りがかっただけなんで」


「私は赤城圭、こっちが白木麻依、高三。助けてくれてありがとう、ございました」


 …俺も名乗った方がいいんだろうか。まあいいか。別に名乗ることでデメリットもないしな。


「へぇー、一年なのにもうダンジョンに入ってるんだ。すごいねー」


 それからしばらく話して、彼女たちは近くの高校の生徒で、そのクラスメイト同士でダンジョンまで来ていて、逃げ出した彼らもクラスメイトだったことや、レッドキャップに襲われた時の話を聞いた。

 赤城さんの方は、距離感が近い。気まずくならないように配慮してるのか、ただ気になってることを聞いてるのかは知らないが、こっちに話を振ってくる。

 白木さんは、多分いい人だ。少ししか関わったことのない男子に惚れられてそう。

 そんなこんなしてると、話の流れで、ダンジョンの外まで2人を送っていくことになってしまった。


「ダンジョン攻略に必要なのは、ステータスとスキルだから。一年でも三年でも、難易度は変わんないよ」


 先輩なんでタメ口でいいですよーと言ったものの、白木さんは恩人相手にタメ口なんて…と恐縮していたため、折衷案として、お互いタメ口で話すことになった。

 白木さんの奥ゆかしさを見て、何の躊躇もなくタメ口で話し出した赤城さんはなにも思わないのだろうか?


「それでも、すごいことには変わりないよ。さっきも、私たちが全然敵わなかった相手を鎧袖一触だったもん!」


「そうだよねー。レベルはあんま変わんなそうなのに、圧勝だったもんね。ねね、最後に使ってたやつって、スキル?」


「ちょっと、圭!」


「いいじゃん、麻依だって気になるでしょ?」


 スキルの話か。好都合だな。


「そうだよ。自分の身体を近くにワープさせることができる」


「おー!やっぱり!」


「もー、圭ったら。ごめんね、助けてもらった立場なのに。こんな不躾に聞いちゃって」


 スキルやステータスを他人に聞くのは、模試とかの成績を他人に聞くようなものだ。白木さんはそういうの気にしそうだもんな。


「全然気にしてないよ。ただ、代わりにと言ったらなんだけど2人のスキルも聞いていい?」


「もちろん!私のスキルはねー、ガーディアンだよ!筋力と耐久のステータスが2倍になって、味方のダメージを肩代わりできるの」


  …つっよ、ぶっ壊れじゃん。だいぶ当たりだろこれ。


「私のスキルは聖女って名前で、MPが倍になって、回復魔法と、聖魔法を使えるようになるよ」


 ………なんか、もう、いいや。


「2人ってまだ、探索者になってないんだっけ?」


「うん、なってないよー」


 なるほど。2人は今日初めてモンスターを殺した、つまりスキルを獲得したので、探索者協会も2人のスキルを知らない。こんな強スキル持ち、どこのクランも欲しがるぞ。なんなら国が動く。


「なるほど。2人のスキルって、さっきのクラスメイトの人たちには教えてるの?」


「聞かれたけど、秘密にしてたよ。流石に、このスキルを言ったら騒ぎになることくらい分かってるから」


 賢明な判断だなあ。俺に言うのはいいのかって感じだけど、彼女達にとっては俺、命の恩人だし。


「そういえば、君はクランとか入ってるの?」


「クランどころか、探索者ですらないけど?」


「え、そうなの!?」


「そうだよ。試験、落ちたから」


「そんな、あなたを落とすなんて。探索者協会の目は節穴なの?」


「まあ、スキルとステータスが一番重要って言うのは当たり前の価値観だからね。探索者としてやっていけないと判断されるのもしょうがない」


「そんなこと…私から父に言って」


「麻依」


「圭、でも!」


 赤城さんが白木さんの言葉を遮る。彼女達の学校は有名なお嬢様学校だった。親が権力者だったりするのかな。


「まあ探索者になれなくて困ってることも特にないから大丈夫かな。気持ちだけ受け取っておくよ」


「その、私は!」


「麻依、ダメだよ。私たちには、約束があるんだから。…ごめんね、私たちは君を探索者にしてあげられない。…せっかく、助けてもらったのに」


 さっきからなにを言ってるんだろうこの人たちは。


「えーっと、話を聞いて欲しいんだけど。別に俺、探索者になれなくてもなにも困ってないんだよね。別にダンジョンには入れてるし」


「あれ?確かに。何で探索者じゃないのにダンジョンにいるの?」


「友達が結構強い探索者で、探協から許可取ってくれたんだよ」


 詩織の名前は出さずに、ところどころ端折りながら説明した。まあこんな努力無意味だろうが、しないよりマシ。

 明日は詩織と、光耀のクランの本部に行くわけだから、彼女達のことはその時聞こう。


「なるほど、じゃあ特に不自由はしてないんだね!よかったあ!」


 最初からそう言ってましたがね。


「でも、探協に話を通せるなんて、君の友達はだいぶ凄い人みたいだね?ひょっとして、有力クランの人だったり?」


「ご想像にお任せするよ」


「ふーん。ね、相談があるんだけど」

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