第3話

 殺したゴブリンの死体が光になって消え、その後に小石よりも小さい魔石が残る。ダンジョンのモンスターは殺すと死体が消える。そして経験値とアイテムを残す。魔石は大体のモンスターが落とし、強いモンスターほど大きい物を落とす。モンスターが落とすアイテムは探索者の収入源だが、この大きさの魔石じゃ売っても数百円にもならないだろう。今回はいらないな、置いていこう。

 ゴブリンの血で汚れた服はすっかり綺麗になっていた。今俺が着ているのは戦闘服。最新モデルのやつで、軽さが売りなので防御力はあまりないが、それでもその辺の服の数倍はある。さらにこの服、スキル的な効果がついていて、汚れない。汚れても勝手にきれいになる。結構高いやつで買ったら二百万くらいはするんじゃなかろうか。詩織が餞別としてくれた。

 やっぱり持つべきものは探索者の先輩だね!

 その後、ゴブリンを狩り続けること五時間ほど。複数でいるゴブリンを見つけたら引き返し、単独のゴブリンに狙いを絞り、かつできる限り奇襲することを心掛けていたらまだ70匹ほどしか殺せていない。

 途中でレベル3に上がったおかげで処理スピードは速くなったが、それでも時間がかかる。スキルを覚えなかったのも痛い。

 はぁ。とりあえず一度出るか。

 外に出る最中の通路にもゴブリンが何匹かいたが、レベルが上がったことで、ゴブリンを撒けるくらいには速くなったので無理やり突破した。


 …なんか、周りからの視線を感じたが、気のせいでしょ。多分。ワープでダンジョンを脱出して、若干遅めだが昼食を取ることにした。

 やっぱり運動した後は月見バーガーだよね!コーラうまい。


 さて、相変わらずダンジョンの入り口付近では視線を感じたが、そんなの無視してダンジョンの中へ戻ってきた。今日中にあと80は狩れるな。


 ゴブリンとかいうモンスターと戦う時、頭は当然として、それ以外にももう一つ、俺の方が優っている部分がある。それは感知能力。ゴブリンの視力は0.5とか0.6とか言われていて、大分低めであり、聴力も同程度である。

 だから単独のゴブリンを選べば余程のことがない限り、不意打ちは成功するし、ちゃんと警戒していれば、こちらが先に相手を確認できる。

 これが俺がゴブリンを安定して狩れた理由かつ、俺がこのダンジョンに来た理由なのだが、大分慣れてきたし、もうそろそろ不意打ちを卒業すべきだろう。


 都合よく単独のゴブリンを見つけたので、彼又は彼女に相手してもらうことを決める。


「やあゴブリン、決闘しようぜ!」


 あくまでフレンドリーにゴブリンに声をかける。第一印象、大事。


「ゴブ!ゴゴブ!」


 ゴブリンは、こちらを確認すると右手に持った棍棒を振りかぶりながら走ってくる。

 速さ自体はそこまでで、50メートル6秒ちょいくらいか。とはいえ人に似た姿の化け物が棍棒を振りかぶって走ってくる光景は結構な気味悪さを感じさせる。これがこのダンジョンが不人気な理由なのかな。


「ゴブブゥ!ゴバァ!」


 突っ込んでくるゴブリンに足払いを決める。敏捷は俺の方が高いので簡単に入った。そのまますっ転んだゴブリンの棍棒を持つ手をナイフで切り付け棍棒を奪い、さらに切り付けて殺した。


 一体なら余裕か。次、行くか。

 その後は、二体以上のゴブリンにも攻撃し、三体までなら怪我もなく殺せることがわかったので、見つけたゴブリンを片っ端から殺しつつ、取った首級が150を数えたあたりで帰った。

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