第2話
スーパールーキーさんにボウリングで完勝した翌日、俺は学校をサボってダンジョンに来ていた。探索者になれてれば公欠扱いだったのになあ!!
数日前に入った『始まりのダンジョン(青)』とは別のダンジョンである。誰がつけたのか知らないが、ダンジョンにはちゃんと個別に名前がある。名前はダンジョンの難易度や地形、出現モンスターなんかに対応しており、始まりのダンジョンという名前のダンジョンには、人に攻撃するモンスターが出てこない。俺がプチプチ潰していたスライムも人に攻撃しないモンスターだった。
数あるダンジョンの中でも、始まりのダンジョンは特別で、一階層しかない代わりにその一階層がめちゃくちゃ広く、さらに出入り口が複数ある。国もこのダンジョンだけは入場規制していない。巷では、人類をレベル1にするためのダンジョンとか言われている。
ただ、スライムをどれだけ潰しても、レベル3くらいが限界らしいので、もっとレベルを上げやすいモンスターを殺す必要があるわけだ。レベルはモンスターを殺してれば上がり、モンスターが強い方が上がりやすい。
それにレベルを上げていればスキルが手に入る可能性もある。
強くなるには強いモンスターを狩る必要がある。
よってここ、渋谷の初心者ダンジョンまでやってきたわけである。聞くところによると、レベル20くらいまではここで上げれるらしい。現役探索者さんにも確認したので間違いない。
さて、ダンジョンの入り口の前には検問というか関所というか、そんな感じのが設置されている。
さて、ここで法律の話をしたいと思う。ダンジョンの中というのは、扱い的には国土ではない。これは国際的な場で決まった話で有名な事実だが、そのせいでダンジョン内での犯罪がどうだとか拾得物はどういう扱いになるんだとか色々複雑な問題が出てくる。
まあそれはいいとして、これのせいで、国がダンジョンへ入る人間を制限するためにはダンジョンの周りの土地を買い占めて、そこへの不法侵入で取り締まるしかないわけ。
ここに抜け穴がある。要するに、立ち入りが制限されていない土地から、直接ダンジョンの中に入れば遵法ということだ。
「ワープ」
俺はワープのスキルを使用して、ダンジョンの中へ入った。
職員さん達がダンジョンの外から驚いた目で見てるが、俺を取り締まることは出来ない。俺は悠々とダンジョンの奥へ向かった。
緑色の肌に人を縮めて醜悪にしたようなモンスター。最初に見つけた獲物はゴブリンだった。曲がり角を曲がった先にいる奴はこちらに気づいていなかったので、気づかれないように慎重に立ち回る。
頭が弱く、身体も弱いとされるゴブリンだが、頭はともかく、身体能力に関しては今の俺では五分五分である。ゴブリンだけに。
俺が今持っている武器はナイフ。ナイフを選んだ理由はいくつかあるが、まず一つは重量の問題。ワープは、俺の身体と一緒に服などの装備も運んでくれるわけだが、その合計量に比例して消費MPが上がる。そのせいでなるべく軽い必要があった。
ステータスを見る前の第一候補は槍だったが、ステータスが低すぎることと、生えてくるスキルを考えた結果、見送った。
レイピアやエストックも考えたが、殺しづらそうだったのでやめた。
さて、話をゴブリンとの戦闘に戻すと、相手の得物は棍棒なので、リーチ的には不利、ステータスも五分五分。
それならやり方は一つ。初撃で殺す又は重傷を負わせる。
ゴブリンがこちらへ背を向けた瞬間に忍び足で接近。ある程度距離を詰めたら駆け出す。
「ゴブ!?」
足音でこちらに気づいたようだがもう遅い。自分の最高速は把握している。これなら十分届く。
「ゴブ!ゴバアァァ!」
振り返ったゴブリンの喉元にナイフを突き立てる。そのままナイフを捻って少しでも出血を多くさせる。そしてナイフから手を離し、棍棒を持っていない方の左手を押さえつける。
この密着状態じゃ棍棒は役に立たないだろ。ステータスが五分五分なら抑え切れる。
棍棒を振り回すゴブリンを押さえつけ、マウントを取る。
数分のうちにゴブリンは死んだ。
ゴブリンの鳴き声ゴブって、もうちょっとなかったのか?
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