探索者になれなかったので勝手にダンジョンに入ろうと思います
@sasakitaro
第1話
「それでも無理なものは無理。諦めなさい」
「いやでもさー、俺より弱い探索者いっぱいいるわけじゃん!納得いかねー!」
今日までに既に同じ言葉を百回以上吐いてる気がする。
15年前、世界にダンジョンが発生した。
ダンジョンからはモンスターが現れて、世界各国は大混乱に陥ったが、なんやかんやあって落ち着いた。
そして、ダンジョンの出現とともに、ダンジョンに入り富を得ようとする者たち、探索者が現れた。
我が国ではいち早く探索者制度を公的にして成功を収めた同盟国に倣って、探索者組合を設立したわけだが、俺はそんな探索者組合の試験を数日前に受けた。そして落ちた。
落ちた理由は単純だ。スキルとステータスが終わってるからである。
ダンジョンに入りモンスターを一体でも殺すと、誰でもレベル1になり、ステータスとスキルを得ることができる。ステータスとスキルは、今までの人類の規格に当てはまらない超人を生み出し、人々はこぞってダンジョンに群がり、世はまさに大ダンジョン時代というわけである。
最近の金持ちは、強い探索者に金を払って自分の子供のレベルを上げてもらい箔をつけるらしい。
ステータスとかが社会的ステータスとして扱われるようになった今となっては、偏差値を十上げるより、レベルを十上げる方が圧倒的に価値があるので仕方ないね。
と、それはともかく、5日前、ダンジョンに入り、その辺のスライムを適当にボコリ散らかし、レベルを2に上げて出てきたまでは良かった。
それから初めて自分のステータスを見て愕然としたね。レベルアップによる全能感が吹き飛んだ。
まあ実際に見せた方が早いだろう。これが俺のステータスである。
レベル2
HP 10
MP 12
力 10
魔力15
敏捷13
耐久8
スキル ワープ
ステータスの各数値の平均は、大体20と言われている。しかもその平均は、レベル1の平均なので、レベルが上がっているはずの俺のステータスは、正直に言ってゴミ。そこらへんの小学生にすら負けかねないのである。
そして、スキルのワープ。これがまたひどい。俺がまだ使いこなせないだけなのかもしれないが、調べた限りでは、対象は自分か、自分より質量の軽い非生物。そして、自分が視認していてかつ20メートルくらいの場所までしかワープできない。短距離専用である。
とはいえちゃんとしたステータスの持ち主が扱えば強かったのだろうが生憎MPが12しかない俺では宝の持ち腐れである。一回ワープするのに最低10のMPを使うので一度使うと大分長時間使えない。連戦が起こりやすいダンジョンでは致命的だ。
と、こんなステータスが原因で足切りを食らったわけである。筆記試験満点だったのに。戦闘試験も結構いい感じだったのに。
「試験官に勝ったら問答無用で採用とかにしてくれよー!」
「まあ戦闘技術があってもステータスが伴ってないとすぐ死ぬしね。それに、技術は磨けるわ」
流石現役の探索者様。厳しいお言葉である。宮野詩織、今年4月に初めてダンジョンに入ってから、破竹の勢いで実績を重ね、スーパールーキーと呼ばれる彼女。ダンジョンに合法で入れるのは16歳になってからなので、誕生日の早い彼女は俺より先にダンジョンに入っていた。
「ちょっとステータスとスキル分けてくれない?1割でいいよ」
「1割も分けたら今の数倍になりそうね」
数倍どころか数十倍の可能性もある。
今俺たちが駄弁ってるのは高校の俺達の教室で、彼女がいるのは珍しい。ある一定以上奥に潜る探索者は泊まりが多くなったりなんだりで、彼女も学校を休むことが多い。探索者は公欠扱いである。うらやましー!!
「ま、今日は一日オフだし、傷心の貴方を慰めるのに付き合ってあげるわ」
「お、マジ?じゃあ何する?ボウリングまでなら許容するけど。卓球はもうやらんぞ」
レベルの高い探索者は超人だ。手押し相撲やったら手が吹き飛ぶし、ジャンケンしたら風圧でパーになる。ババ抜きをやったら力が強すぎてカードが引けない。
でも、ボウリングならギリギリ勝てる。
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