第14話 午後の到来

 その後の作業は、虚しいものだった。バランスを崩したときに擦ったのか、エステルは片膝に擦り傷を負っていて、アーサーはその応急処置のため退却。

 私が残りの床を磨き終わると、ほどなくしてエステルが帰還したので、二人で壁と床を応急措置した。

 そのときアーサーはさっきよりもずっと近くで見ていて、もっとニコニコしていた。私とエステルは黙っていた。なぜかいろいろとバレていないのが謎すぎて、喋るどころではなかった。

 応急処置というのは、板をあてがって固定するだけの作業だ。欲望のパールがこれを見てなんと言うかわからないが、怒られたら、私が自力でレンガを積もう。

 そんなこんなで、本日の午前は終了した。



「使用人が一人で寂しいと思うこともありましたが、先輩というのも大変ですね」


 キッチンの外を出ると、またしても謎の紅茶を飲みながら、アーサーが言った。


「そう……ですね」


 彼の何が大変だったのかよくわからなかったが、とりあえす相槌だけ打っておいた。


「そういえば、そろそろですよ」

「なにがですか?」

「おっと、噂をすれば」


 そのとき、ごろごろと、庭の外あたりから車輪の音がした。

 おそらく、馬車だ。


「パール様がお帰りです。使用人らしく、気合い入れてお出迎えしなくては」

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