第3話 案の定のぼっち化

 藤堂も居たたまれなくなったのか転校していき、1ヶ月間、俺は英雄扱いだった。


 だが、次第に俺がイタイ言動しかできない奴だと認識され、結局ぼっちと化した。そりゃあ、孤高の死にたがりを気取っていたら、向こうも困惑するだろうしな。


 だが、なぜか。


 今日の昼飯も沙原さんと一緒だ。


「もっと明るく振る舞ってもいいと思うの。一条くん、ちょっと話しかけにくいオーラあるのかも」


 空き教室で沙原さんと一緒にランチできるのはいいのだが、緊張する。


 食べ物も喉を通らない。箸を持つ手も震えるが、必死に抑える。


 格上相手には強気に出られるが、こうも可愛い女子相手だと調子が狂ってしまう。


 ぼっちなうえに女子と接してこなかったので、こうなってしまう。


「一条くん、不安そうだけど、大丈夫?」


 見抜かれていたか。


「大丈夫。日に日に希死念慮が強まってるだけだから」


「全然大丈夫じゃないじゃん! どうしたの? 悩みなら聞くよ」


「いや、悩みとかじゃなくて、漠然と死にたいというかんじかな。将来が不安だったり、人生がラットレースに思えて空虚に思えたり」


 俺はまたそんなカッコつけたことを口にしていた。


「分かるかも」


 対する沙原さんの答えは、意外なものだった。


「沙原さんもそう思うことがあるのか?」


「あるよ。特に藤堂に屈していたときはね。あー私、これからも藤堂やセクハラ教師やパワハラ上司やらに尊厳を踏みにじられて生きていくんだろうなって思ってた。もう生きてても惨めなだけじゃんって」


 確かに、沙原さんの言うことには真理もある。理不尽に耐えなければこれからの人生は生き抜けない。皆そんなことと折り合いをつけて生きていくのだろう。


 俺はどうしても耐えられないので、理不尽と戦って死ぬか、自殺するかの二択しかないが。


「でも、一条くんが藤堂を倒してくれた。お陰で私、分かったの。諦める前に戦うべきだって」


 聞けば、藤堂は巨大財閥の御曹司なだけでなく、母親がこの学園の理事長らしい。確かにそうなれば抵抗するのも難しいか。


「戦うだけが正解かは分からないけどな」


「そうね。でも私は、一条くんにはもっと自分を大事にしてほしい。皆のヒーローなんだから」


「うっ、善処するよ」


 俺はそんな曖昧な返事しかできなかった。

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