檻の中の生活から

第15話

起きれば魔王はいない。無意識に探してしまう。罪悪感にかられながら気分は最悪だ。


(好きになんてならないと思っていたのに……)


三百年前に世界を壊したことと、今のサラに優しい魔王のバランスが取れない。


(考えてる事もスケベだし……)

今のところ、優しさとスケベ心しか見えない。


だが見れば思考が止まるくらいの美貌がある。あの美しさは最早暴力だ。


(悔しい……)


朝支度をしながら考えていた。


ベッドにうつ伏せになり、右手を叩きつける。

何だか音が大きかったような気がする。

サラが手を叩きつけるのをやめると、まだ音がする。


「外からだわ」


すると、壁にヒビが入る。


「なに?」


ヒビがどんどん増えて大きくなっていく。サラは怖くてその壁から出来るだけ遠くに離れる。

壁に穴が開く。光が差し込んで眩しい。


ひょっこり顔を覗き込ませた、金髪の男の人と目が合う。


「大丈夫?」

「え? 誰?」

「とある村で女性が連れ去られたと聞いてね。助けに来たよ」

「助けに?」


もしかして魔王はこの人に倒されたのかと心配になる。


「そそ。アイツが戻って来ないうちに、ここから出よう?」

「でも……」

「今のうちなら大丈夫」

男の人は手を伸ばしてくる。


「ほら。行くよ」


サラはあとの事はあまり考えず、手を取ってしまった。

外の空気が恋しかったからからだ。

久しぶりに空が見える。ここは地下だと思っていたが、相当な高さの位置にある城だったようだ。


「さあ、ドラゴンに乗って」

「白いドラゴン? 貴方、勇者なの?」

「そう呼ばれているね。じゃあ行くね」


ドラゴンが羽ばたくとあっという間に城は遠ざかっていった。


「村に帰してくれるの?」

「いや、君は処刑されるよ」

「は? なんで?」

「君は、最後の魔族の番だからね。繁殖されると困る」

「助けに来たって嘘なの?」


「ごめんね」


中性的な顔立ちの勇者は爽やかに笑った。この人の方がよほど悪人に見える。

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