第5話
いつものように物資調達のお姉さんが来た。
「花とかないかしら?あとは、とにかく暇潰しできるものとか」
相変わらず微笑むだけのお姉さん。そうかと思えば。
「かしこまりました。本は二日後、花は5日後に届くように手配します」
「……ありがとう」
唖然とするサラのお礼など何でもないように微笑んでいる。
なぜか花のほうに時間がかかるらしい。
「ねえねえ、あなた。名前はなんというの?」
彼女は微笑んで一礼すると戻っていった。
「そこは無視なのね」
必要なもとそうでないものを確実に判断している。
「仲良くなって脱出の手伝い作戦は遠いわね」
夜を待つ。魔王が帰ってくる。
「日中は外で何してるの?」
「教えないが、知りたいのか?」
「え? 教えんのかい」
「ああ、知らなくて良い」
「それより、食事運んでくれるお姉さんの名前はなんというの?」
少しの間がある。
「さぁ、知らないな。そういえば聞いたことがない」
とぼけているのかほんとに知らないのかどっちだろうか。
「私の名前も知らない感じだしね」
「呼んでほしいのか?」
冗談半分で言っているのがわかった。
「黙らっしゃい!」
教えてなるものかという気持ちになった。よく考えると魔王の名前も知らないが名前を呼び合うのもゾッとする。
「お前の名前はなんだ?」
ぶっきらぼうに聞いてくる魔王。
「名乗るほどの者ではございません」
「そうか」
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