第3話
朝早く目覚めたのに魔王はいなかった。
「いない。夢ね。どちらかというと悪夢だわ」
訳のわからないヤンデレに監禁される悪夢だ。
鏡を見ながら、自分の姿を確認する。聖女リムニと髪と瞳が色違いのサラだ。
思い返しても魔王がリムニに惚れる要素はあっただろうかと考えるが、そんな隙はなかったと思う。そもそも好きなら殺さないだろう。
死の恐怖や痛みを感じる暇もないほど一瞬だった。正直どう殺されたのかは覚えていない。
「うーん。ないない」
サラは自分が好かれている可能性を消した。
「それに……」
(こっちもいくら顔が良くても好きにはなれないわ)
完全に願い下げだ。
だったらここにいる意味はない。もっと他にしたいこともある。
サラは通気口を探した。
見つけたのはいいけど8本ものネジで固定されている。
「これは外れないわね」
しかもこの通気口の大きさは人間が通れないモノだった。
「やるわね、最悪」
どうやらここは後宮兼牢獄のようだ。
毎日檻の一部に水をかけて錆びさせるとか。何年何ヵ月かかることやら。
すると物音が聞こえてきた。
荷車で荷物を運ぶ女性だ。
「お着替えとお食事をお持ちしました」
「ねえ、お姉さん。出してくれない?」
女性は朗らかに微笑むだけだ。
器用に鉄格子の隙間から一品一品机に置いている。
「ねえねえねえねえ?」
彼女は微笑んで一礼すると戻っていった。この建物の構造くらいは聞き出したかった。ちなみに風呂とトイレは檻の中にある。
「はあ、食べますか」
サラは、まだ温かい食べ物にありつくのだった。
「これはどうしたものか」
考えてみると答えは簡単だった。魔王は鍵を持っている。寝ている隙に奪えば良いのだ。
「昼間ぐっすり寝て、とにかく寝たふり、寝たふりをするのよ」
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