第41話

「もう一つ、聞いてもええ?」


「何?」


「ミオの両親って、どんな人なん?」


「え、何...で?」



唐突な心汰の質問。だが、一般的に親を持つ子どもならば簡単に答えらる質問でもある。

しかし、質問の瞬間ミオの鞄を持つ手には力が入った。



「別に。共働きってどんな仕事してるんかなぁって思っただけやで?」



今までのように軽い口調で話す心汰だったが、その目は小型犬とは程遠く、まるで狼にでも睨まれているような感覚を覚えた。



「そ、そう。母親、はジュエリーショップの経営をしてて、...父親は、不動産会社を経営をしてる。」


「すごいやん!経営って事は社長って事やろ?!ミオってお嬢なんやな。なぁ、それと...」


「全然、そんなんじゃないから!ご、ごめん!夕飯の支度あるからあたし帰るね!また、明日。」



心汰の質問を遮るようにして、ミオは足早に教室を出て行った。



「ミオ、ごめんな。...もう少し、待ってな。」



教室で一人残った心汰はミオが出ていったドアを見つめ、呟いた。



「まだ残ってるのは誰かなー?学校に用がない生徒はさっさとお家に帰りましょう。じゃないと、お子さまは悪い人に誘拐されちゃうよ。」



ミオが出て行って数分後。

突然、教室に響いた声。一般的な男性よりも僅かに高めのその声のする方へ心汰は視線を動かした。

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