第40話

そして放課後、各々が部活や高校受験に備えての補習授業に向かう中、ミオは帰宅の用意を始めた。



「ミオ、部活入っとらんの?」


「うち、両親共働で家の事しないといけないから。」


「そうなんや。」



その前では安己奈も既に帰宅の用意を終えていた。



「安己奈も帰るん?」


「帰るよー。部活とかやる気ないし。」



安己奈は鞄を肩に掛けると、「じゃあねー。」と手を振り先に教室を後にした。



「それじゃ、あたしも帰るね。」


「なぁ、ミオ。」



椅子に座ったまま、心汰はミオを見上げた。



「何?」


「ミオって竹原の事どう思ってるん?」


「またその話?言ったでしょ。1、2年の時に同じクラスだっただけって。」


「好きじゃないん?」


「好きとか嫌いとかそんなんじゃないよ。」


「あー、竹原に興味ないって事か!」


「うっ...」



腕組みをしながら一人納得したように頷く心汰に、図星を突かれたミオは言葉を詰まらせた。



「じゃあ、好きなヤツとかおらんの?」


「いないよ。」


「彼氏とか欲しくないんか?」


「今のあたしには必要ないから。」


「えー、なんでやねん。青春やんか!甘酸っぱい恋の想い出つくろうやー!」



大袈裟なアクションで訴える心汰にミオは苦笑いを浮かべていた。



「そうだね。いつかは出来るといいな、とは思うけど...今はそれよりも先にやらなきゃいけない事があるから。」



一際低くなった声音と瞳の奥に垣間見えた闇。ミオの言葉に心汰の表情は強張り、背筋がぞわりとした。

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