第39話

その時、立ち上がり何も言わずその場を離れようとしたミオ。

しかし、竹原に掴まれた手がそれを阻んだ。



「芦田待っ...」


「もー、竹原くん冗談言ってからかわないでよ。」



困ったような笑顔を見せるミオに、竹原の手は離れた。



「竹原くんのファン多いんだからね!あたし、飲み物買ってくるね。何かいる?」


「いや、俺はいいよ。」



「そう。」と言ってミオは自販機へと向かった。

その背中を見つめる竹原の目は、戸惑い、照れながらも真っ直ぐに向けられていた。

その後、飲み物を持って戻ったミオ。

誰も竹原の発言には一切触れる事なく他愛ない話をしながら昼食を終えた。



「それじゃ、またな。」



ミオを一瞥して、ニコリと笑った竹原は自分の教室へと戻っていった。



「ミオー!午後の授業ってなんやったっけ?」


「英語。ねぇ、もう授業中こっち見ないでね。ちゃんと黒板見て授業受けてよ。」


「あー、お腹いっぱい。眠ーい。」



しかし、廊下の突き当たりまで来た所で、背を向け歩き出したミオと心汰のやり取りを見つめ、複雑な表情を浮かべている竹原の姿がそこにはあった。

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