第38話

「すげーな立花。そんなほっそい体のどこに入ってんだよ。」



パクパクと次々に箸を運んでいく安己奈の様子に竹原はあんぐりと口をあけた。


「ん?何?気になる?竹原あたしの体見たいの?いいけど高いよ。一回百万取るよ。」



ビシッと箸を竹原に向け胸を張る安己奈。その口許には米粒が付いている。



「なんで、そうなるんだよ!ってか、見るだけで百万は高ぇーだろ!」


「安己奈、行儀悪いよ。人にお箸向けないの。」


「で?爽やかくんはミオの男なん?」


「え!?」



突然飛び込んだ心汰の発言にたまごサンドを口に運ぼうとしたミオの手が止まり、安己奈の箸からはカツが落下した。



「駒草、あたしよりも直球な奴久しぶりに見たよ。」



安己奈は苦笑しつつ、丼に落下したカツを再度口に運んだ。

そして、次の瞬間には今にもレーザービームでも発射されそうなミオの鋭い視線が心汰を貫いた。



「ん?ミオどないしたん?」



しかし、心汰は意に介してないようだ。


驚きの声を上げた後に、竹原はポリポリと頬を掻いた。

その頬は若干赤らんでるように見える。



「いや、違うよ。今は...な。」



竹原の意味深な発言にミオは持っていたたまごサンドを置いた。

そして、ちらりとミオを見た竹原は更に続ける。



「でも、そうなりたいなとは思ってるよ。」


「へぇ~、そうなんや。」



ニカッと照れ笑いをする竹原に、一番騒がしく盛り上げそうな心汰が、表情を変えず今までで一番静かで落ち着いた声音で返答をした。


ガタリ。

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