第31話

すると、突然聞こえた自分を呼ぶ声に、ミオは驚きながら声のした方を見た。

そこには、いつの間にか"ミオ"と言う呼び捨てを確立させ、昼休み開始の合図と共に教室を飛び出して行った心汰が、教室の入口に何故か仁王立ちしていた。



「え?あたし?っていうか、食堂分かってて出てったんじゃないの?」


「は?そんなん知るはずないやん。俺、転校生やぞ!」


「そこ開き直るとこじゃないでしょ。」



何故か自慢気に腰に両手を当てている心汰。呆れるミオは更に疲れがのし掛かった気がした。



「でも、なんであたし?他にもいるでしょ?ってかむしろみんな案内したがってると思うけど。」



ミオの言葉の通りで教室内や廊下では、心汰にチラチラと視線を向ける女子生徒達がいるのだ。


しかし、そんな様子を背にしながら心汰は哀しげな表情を見せた。



「冷たいな~。お隣さんの好みやんか。なんや、俺と昼飯食うの嫌なんか?ヒドイわ~、冷たいわ~俺ミオがそんな冷たい人やと思わんかったわ。」



しくしくと両手で顔を覆う心汰。だが、その指の間からはチラリとミオを見る目が覗いていた。


明らかに嘘泣きだ。

しかし、ツッコミを入れるのも面倒になり、諦めたミオは「分かった。」と返事をして腰を上げた。



「よっしゃ!行くでー!」


「お腹空いた~。」



ダルそうに歩く安己奈と何故か気合いが入っている心汰と共に、ミオは食堂へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る