第30話

そして、いつも通り授業が始まった。

教科書を開きノートを取りながらも、つまらなそうに欠伸をしている安己奈とは正反対に、黒板と教師を見つめ熱心に授業を受けるミオ。


そのノートは綺麗な文字で、重要な部分は色分けをして分かりやすく書かれていた。



「へぇ~字、綺麗やな。」



唐突に横から聞こえてきた声に顔を向けると、ノートを覗き込む心汰の顔がすぐそこにあった。



「な、何?」


「ん?別になんもないよ。ただ、綺麗な字書くな~って思っただけ。」


「そ、そう。」



しかし、"何もない"そう言った心汰の視線は次の授業でも、そのまた次の授業でも、ミオに向けられていた。


「言いたい事あるなら、聞くけど。」と言っても"なんもないよ"と返され。

「そんなに見られてたら集中出来ない。」と言えば"気にせんでいいよ~"と的外れな答えが返ってくる。



「なんか、...疲れた。」


「疲れたって言うより、"憑かれた"って感じ?」



午前の授業が終わり、机に突っ伏して項垂れるミオ。ミオと心汰の様子を見ていた安己奈はそれを面白そうに見ていた。



「それ、うまいこと言ったとか思ってたらグーで殴るよ。」


「きゃ~ミオったら野蛮!安己奈コワーイ!」



ふざけたように笑いながら両手で自分の両頬を覆う安己奈にイラッとしたミオの顔が引きつる。



「ミオー!昼休みやでー食堂案内してーやー!」

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