第29話
突如、俯いていた頭の上から聞こえてきた声に、ミオは顔を上げた。
すると、目の前にあったのは小型犬のつぶらな瞳。
「へ?なんで?」
「あんた、学級委員なんやろ?色々教えてもらおう思て、席替えてもらった。お隣さんよろしくな!」
そう言って隣の席にドサッと荷物を置き、勢いよく座った心汰は前後の席に座る者と斜め前にいる安己奈にも、よろしくな、と満面の笑みを向けた。
それに対して顔を赤くして緊張気味に返す女子達とは違い、さっぱりと「よろしく。」と言って満面の笑みを返した安己奈。
(あ、今の笑顔作った。)
そう思ったミオの視線に気付いたのか、安己奈は「バレた?」とでも言いたげに横目でミオを見ながらわざとらしい笑みを浮かべた。
小さく苦笑しながら心汰の為にと廊下側に用意されていた席を見ると、今までミオの隣にいた生徒が座っていた。
「そっか。うん、よろしく。」
理解したように笑顔で軽く頭を下げるミオ。
「なんや、やっぱり顔色悪いな。体調悪いんか?保健室行った方がいんちゃう?」
しかし、そんな笑顔を見せるミオに心汰は心配そうな目を向ける。
「大丈夫。何でもないから、気にしないで。」
そう言って、ぎこちなく笑っている事は自分でも分かっていた。
しかし、これは保健室で休んだところで治るものでもない事も分かっている。
ミオのその様子に気付いていた安己奈もそれを知っている為、何も言わない。
自分も前に同じ事を聞いて、同じように返された事があるからだ。
「そうか?それならいんやけど。」
「うん。心配してくれてありがとう。」
ミオは心汰から目を反らすと授業の用意を始めた。
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