第28話
「ちょっと!かっこよくない?」
「いや、あれはかわいい系でしょ!」
「やっぱり、男なのかよ。」
男女共に隣近所同士で小声で話す生徒達。しかし、僅かな期待を抱いていた男子だけはあからさまに肩を落としていた。
「あら~これはまた種類の違うレベル高いの来たね。」
横向きに座りながら椅子の背もたれに肘を付いている安己奈はそう言って、口をあんぐりとさせている。
「はい、転校生を紹介します。あ、じゃあ自分で言ってもらうか。」
そう担任が言うと、転校生は一歩前に出た。
「初めまして、駒草心汰(こまくさ しんた)です。出身は関西、父親の仕事でこっちに来ました。好きなのはスポーツ全般、嫌いなのは勉強。あ、保健体育は除く!ってな感じでどうぞ、よろしく!」
短髪にくりっとした目。笑うと目尻に寄るシワは人懐っこい印象を教室内に与えた。
まるで...
(小型犬みたい。)
「なんか、ワンコって感じ?」
安己奈も同じ事を考えていたらしい。
垂れ下がった耳が付いたのを想像しながら心汰を一瞥すると、ミオは窓の外に視線を移した。
朝の快晴は何処かへ行ってしまったのか、今にも雨が降りだしそうだ。
「はぁ。」
小さく息を吐いたミオ。
指先が冷たい。吐き気にも似たもやもやした感覚がミオを襲う。
(早く、雲晴れないかな。雨、降らないといいな。)
「どないしたん?気分悪いんか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます