第23話

安己奈は大きな瞳をミオに向けニヤリと笑った。



「ふーん。どっちも男なんだ。なんか少女漫画みたいな話だね。」


「お、じゃあ。転校生との運命の出会いと教師との禁断の恋の間で揺れ動く少女の心!実は転校生は幼い頃に離ればなれになった結婚を約束していた幼馴染みだった?!とかどうよ。」



椅子の上に立って身ぶり手振り、小芝居をする安己奈。それを見上げるミオは、また始まったと流しつつ、授業の用意を始める。



「いや、どうよって言われても。何その突然の妄想。」


「あら、興味なし?」


「あんまり。それに、あたし少年漫画派だし。刀で闘ったりとか手からビームとか出してみたいし。」


「んー、じゃあ実は転校生は宇宙から来た...」


「あー!はい、ストーップ!ごめん、あたしが悪かった!安己奈劇場はもういいから!」



安己奈の肩を押さえて椅子へと無理矢理座らせた。

若干机の周りに集まっていた観客達は残念そうにそれぞれの席へ戻っていく。


「いやいや、なんで残念そうなのよ。」と、ミオはその観客達の背中を見ながら呆れ気味にぼそりと呟いた。


「ほんと他人に興味ないよね、ミオって。」


「そうかな?そんな事ないと思うけど。」


安己奈劇場を閉幕させ、フゥと小さく溜め息を吐きながら机にだらりと両腕を伸ばした安己奈。

突然何を言い出すかと思えば、とミオは目をぱちくりさせた。


「じゃあ、あの子の名前は?」


そう言って安己奈が視線を送った先にいるのは1人の女子生徒。


「え...っと、新しいクラスになってまだ覚えてないんだよね。前田さん?だっけ。」

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