第21話

「花永、もう大丈夫だから。ご飯食べよ、ほんとに遅刻しちゃう。」



不安そうに俯く花永の目線に合わせて少し屈んだミオは、花永の緊張を解そうと頭をぽんぽんと撫でた。



「うん。お姉ちゃん、あたし薬ちゃんと飲むからね。忘れないから。」


「そうだね。ママに心配かけないようにしなきゃね。」



花永の言葉の真意を理解しながらも、ミオはそれに気づかない振りをして笑顔を見せる。



「ミオ...」



眉をハの字にして表情を歪ませる和季。それを見たミオはいつも通りの何も変わらない穏やかな表情を見せた。



「お兄ちゃんも、早くしないと遅刻しちゃうよ。」



そう言って再びテーブルに着こうとすると、突然背中に重心と温かさを感じた。



「ごめん、ミオ。ごめんな。」


「どうして、お兄ちゃんが謝るの?」



気付くと和季に抱き締められていた。

後ろから聞こえる和季の声は、とても痛々しく辛く聞こえた。



「俺はミオの味方だから。何があってもミオを守るから。ミオは俺の大事な...」


「お兄ちゃん、ありがとう。あたしなら大丈夫。もう、何とも思わないから。」



そう言って和季の手を外し笑顔を見せると、ミオは花永の隣に腰を下ろして再び朝食を摂り始めた。


その、ごく普通の本当に何とも思ってないのであろう笑顔に、和季はグッと拳を握った。

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