第19話

「はい、じゃあ食べよう!」



ミオが味噌汁をよそい、三人揃ってテーブルに着くと手を合わせた。



「いただきます。」

「いただきます。」

「いっただきまーす。」



学校の事や昨夜のテレビ番組の事、他愛ない話をしながら朝食を摂っていると、突然リビングのドアが開いた。



「ママ!」


「母さん!?どうしたんだよ、突然帰国なんて。」



そこに居たのは、母の典子(のりこ)だった。

母親に駆け寄る花永と和季。その少し離れた所でミオは他人事のようにそれを見ていた。



「あら、自分の家に帰って来るのに理由なんていらないじゃない?」


「それはそうだけど、連絡もないなんて驚くだろ。」


「はいはい、ごめんね。お土産買って来たから許してね。」



そう典子が言うとドアからもう一人、沢山のブランド物の袋を腕に提げた男が現れた。



「おはよう、和季くん、花永ちゃん。久しぶり。」


「松本さん、お久しぶりです。」



和季は少し驚きながらも、挨拶を交わした。


ジュエリーショップを経営している典子は海外を飛び回っており、今では家に月に数える程しか帰っては来ないのが普通になっていた。

松本はその秘書として長年典子の元にいる男だ。



「ほら、これ新しい時計とお財布よ。こっちはブレスレットとネックレス。」



松本が持ってきた袋を開けては次々に和季と花永に差し出す典子。

しかし、松本が入って来た瞬間、母親の久しぶりの帰宅に笑顔を見せていた花永の表情が一気に曇った。

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