第18話

「よし!」



制服を整え、声がする一階へと降りた。



「ではお客さま、今日はどのようにしますか?」



洗面所でブラシとヘアゴムを手にして待ち構えていた妹、花永(かえ)の後ろに立つと、美容室ごっこでもしてるかのような口調で、その背中の中程まで伸びた柔らかくふわふわな猫っ毛の髪に触れた。



「えっとねー、今日はー、三ツ編み!ゆるふわなやつ!!」



ミオとは別の女子中学に通っている花永。

黒目がちの大きな瞳に、長い睫毛。赤くぷるんとした唇は姉の欲目を入れなくとも美少女に違いない。


そんな花永も2年生になり、年頃のせいか最近おしゃれに余念がない。毎日変える髪型をセットしてやるのがミオの日課になっていた。



「はいはい。じゃあ、ブラシ貸して。」



注文通りに仕上げていくミオの手は軽やかに動き、あっという間にセットは完了。



「ほら、遅刻しちゃうから早くご飯にしよ。」



そう言って二人で向かったリビング。ドアを開けると、朝食のいい匂いが鼻を掠めた。



「おはよう。ほら、飯出来てるから食べるぞ。」


「お兄ちゃん、おはよ。」


「おっはよー!見てー!ゆるふわなんだよー!!」



広々としたオープンキッチンに立っているのは兄の和季(かずき)。

毎朝朝食を作るのが和季の役目で、和季の作る味噌汁はミオと花永の大好物だ。

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