第15話

「あぁ、罠だろうな。でも、個人がこんな手の込んだ事をするとは考えにくい。裏で動いてる奴らがいるはずだ。俺達に対する挑発か、もしくは...花王会に対してのものか。」


「まぁ、どっちにしろ俺達がやる事は決まってるだろ?」


「あぁ。」



その時、ピタッと桜真の手が止まった。



「見ーつけた。」



椅子をクルリと回して朔と光祥の方を向いた桜真。



「情報の発信源は、A地区のアパートの一室にあるパソコン。住所も住人も確定したよ。」


「それなら、直ぐに誰か行かせて...」


「ムダだよ。」



光祥の発言をばっさりと遮った桜真は、溜め息を吐いて再びパソコンと向き合った。



「どういう事だ。」



光祥と一緒に無言のまま桜真の答えを待つ朔。



「行ってもムダなんだよね。だってそこにいるのは何も知らないごくごく普通の一般人なんだからさ。」



今度は怠そうにキーボードを叩く桜真だったが、その背中からは苛立ちが伝わってきていた。



「まぁ、いわゆる"乗っ取り"ってヤツだね、これ。多分、持ち主は気付いてない。しかも、オレがその発信源にたどり着いた瞬間、そのパソコンは壊れるように設定されてる。あーあ、かわいそ。」



「って事は、その情報の提供者の手掛かりは全く無くなったって事か。」


「ほんっと頭にクる。なんでこのオレが振り回されなきゃなんないの?」



書類に目を通し終え、立ち上がった朔。

桜真の後ろに立つと苛立つ桜真の、フードを被った頭に手を置いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る