第12話

廊下の突き当たりを左に曲がり、そのまた廊下の一番奥の部屋。


桜が描かれた襖を二枚隔てた先の部屋に、桐谷組の情報網は張り巡らされている。



「桜真、情報は?」


「まとめてあるよ。」



その部屋の奥には大型の液晶画面。

その前には何台ものパソコンと通信機材、数十台の携帯電話、スマートフォンが並べられたコの字型の大きな机が配置されいる。


その中心にいるのはたった一人の人物。


先程、朔達のイヤホンに聞こえていた声の主だ。

桐谷組若頭付諜報担当、一ノ瀬桜真(いちのせ おうま)。


光祥が胸ポケットに挿していたペン、それは桜真が作った小型の盗聴器で、そこから得た情報を調べては二人に伝えていたのだ。


ダボダボの白いパーカーのフードを深く被った中から、ちらりと見えるのは金色の前髪。

それが桜真のいつもの格好で、表情は中々見る事ができない。


桜真は、キャスター付きの椅子に座り、器用に移動しながら作業を進めていた。

そして、朔達の入室を背中に感じると、振り返り、部屋の中央にあるちゃぶ台に書類を置いた。



「情報元は?」


「今、探してる。」



朔の問い掛けに桜真はパソコンとにらめっこしたまま応えた。



「ん?どういう事だ。情報元は分かんねぇのに、確かな情報だって根拠あるのか?」



訝しげに書類を手に取った光祥が目を通していく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る