第11話

先頭で門をくぐった黒髪の男。


桐谷組若頭、桐谷朔(きりや さく)。

群を抜いたその端正な顔立ちと容姿、若干二十歳ながら生まれ持った知力と統率力で桐谷組の若手一切をまとめている男だ。


後に続くのは眼鏡の男。


桐谷組若頭付、藤宮光祥(ふじみや あきよし)。

二歳年下の朔にアキと呼ばれ、幼い頃から朔の右腕として力を振るっている。

朔に負けず劣らずの端正な顔立ちで、それを本人も自覚しており、情報の収集などで利用している。


両者共に、恵まれた容姿と裏の世界ではトップクラスの家柄、そしてそれに伴うだけの戦闘能力と知力と財力。


それを目当てに、女を中心とした欲望に飲まれた輩が擦り寄って来るのは日常茶飯事だ。



「お帰りなさい、朔さん、光祥さん。」


「お帰りなさい。」



出迎えたのは、先程整列して車を見送った男達同様にまだ若い男達。

この屋敷は桐谷組の別邸で、朔を主として桐谷組の若手が暮らす住居となっているのだ。



「お前らまだ起きてんのか、早く寝ろ。明日から忙しくなるぞ。」


「え?!抗争ですか?!」


「どこの組ですか?!」



朔のすれ違い様の発言と鋭い目付きに男達は表情を強張らせた。



「違う違う。でも、朔にしてみたらそれぐらい、いや...それ以上に大切な期間になるはずだ。お前らも力貸してもらうぞ。」


「はい!勿論です!!では、お先に失礼します。」



補足しつつ、ぽんぽんと男達の肩を叩く光祥。

二人の背中に、男達は風を切るかのような勢いで深く一礼した。

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