第8話
「桜真、どうした?」
女が死なない程度に、と様子を見ながらも眼鏡の男はイヤホンに集中した。
目の前の女の生死よりも明らかにこちらの方が男にとっては重要なのだ。
《さっくん、アキくん、すぐ戻って。..."あの子"の居場所が、分かった。》
「?!」
「?!」
いつもの自信満々な口調とは明らかに違うとすぐに気付いた。イヤホンから聞こえる動揺を含んだその声に男達はただ事ではないと察した。
その瞬間、ドサッと女の体が床に倒れた。ピクリとも動かない、気を失ってるらしい。
「アキ、戻るぞ。」
「あぁ。って、お前はどこで手拭いてんだ。殺すぞ。」
女の首を掴んでいた右手を眼鏡の男の服の裾で拭く黒髪の男。
「ん?いいから、早く車出せ。」
脅しなど男達の日常にはありふれていて、慣れたもの。黒髪の男は足早に歩を進める。
「はぁ~、ったく。はいはい、仰せのままに、若頭。」
「その呼び方やめろ。」
眼鏡の男が腰に手を当てながら大袈裟な溜め息を吐くと、それを嫌そうに横目で見ながら黒髪の男は部屋を出た。
そして後に付いて眼鏡の男も部屋を出る。
前を見据えた二人の男の目は、暗闇の向こう側を見つめた。
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