第7話
口を開いたのは眼鏡の男。苛立ちながらも面倒な事になるのは避けたいのか、冷静な口調を保ち、事を済ませようとしている。
しかし、そんな思いは全くの無視で、なんとか自分を売り込もうと女は必死だ。
大きく息を吸い込み、ずいと前のめりになる。
「どこが、特別なんですか?!お二人が探してる女。風俗で人気張ってるとか、三下の組に買われて愛人やってるとか、この世界の人間ならみんな言ってます!」
「だから、それは全部デマだって言って... 」
「そんな女、桐谷さんに相応しくない!そ、それにヤバイ薬にだって手出してるって!」
遮るように言葉を止めない女。
黒髪の男の闇のような瞳がゆらりと光った。
「薬にだって手出して...もう、死んでるかもって...!」
「じゃあ、お前みたいな簡単に股開く女なら朔に相応しいって言うのか?冗談は顔だけにしとけよ。マジで死にてーの?」
女の自意識過剰な発言を鼻で笑いながらも、冷静さも限界を迎えた眼鏡の男は、黒い影を落とし女を睨み付けながら前に出ようとした。しかし、その足はぴたりと止まる。
「っぐ?!」
「黙れ。」
既に女の前には黒髪の男がおり、その手は女の細く白い首にかけられていた。
静かな中にも威圧のある男の声音がやけに部屋に響く。
「...次に何か言ったら、この喉潰すぞ。」
「アッ、ア"ァ?!」
女の喉にグッと更に男の指が食い込み、苦しそうな女の呻き声がこぼれた。
《は?なんだよ、これ!!》
その時突如、二人のするイヤホンに飛び込んで来たのは困惑と苛立ちを含んだ声。
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