第6話
「おい。行くぞ。」
黒髪の男は苛立ったように、顎で出発を促した。
「あぁ。」
「ま、待って下さい!あの、桐谷さんですよね!?」
部屋から出て行こうとした二人を呼び止めたのは、やっと手を離されたが腰を抜かしたのか、床に座り込んだままの女。
黒髪の男は無表情のまま静かに振り向いた。
「...あ。」
自分が呼び止めた黒髪のその男の目に、一時でも映った事に女は頬を緩めた。女の目的が明らかに変わった瞬間だった。
しかし、それはすぐに消え去る事になる。
何を言われた訳でも、された訳でもないのに黒髪の男と目を合わせた瞬間、女の体はカタカタと震えだした。
「お、女を探して、るんですよね?そ!それならっ...あ、あたしを桐谷さんの女にして下さい!」
勝手に震える自分の体を抱き締めながらも、欲に溺れた目だけは輝いている。
そんな女を前に男の表情はぴくりとも動かない。
「あたし、なら絶対っ、役に立てます。あたしが持ってる他の組の情報も全部お話します!それに、体だって満足させられるはずです!だから...ッ。」
女は一瞬息が詰まったような気がした。
男のその目はまるで研ぎ澄まされた刃物の様で、その切っ先が心臓に突き立てられているような感覚を感じていた。
「確かに、俺達が探してるのは"女"だ。でも、あんたが思ってるような"ただの女"じゃない。あの子は"特別"だ。」
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