第5話
その時、何かが破壊されるような衝撃音が男の背後に響いた。
男が振り向いた先にいたのは、鋭い目付きでこちらを見ている黒髪の男。
「アキ、いつまで遊んでんだ。終わったんならさっさと行くぞ。」
「お前、壊すなよな。朔。」
呆れた表情で眼鏡の男が向けた視線の先には、蹴破られたのであろうドアが無惨な姿になっていた。
「あ?鍵閉めてなかったのか。」
「戻すなら最初から普通に開けろよ。」
ボロボロになったドアを、何事もなかったように元の位置に戻した黒髪の男。しかし既にそれはドアとしての役目は成していない。
「桜真が限界だ。」
向き直った黒髪の男の口から出たのは、脈絡のない発言。しかし、二人にしてみればそれだけで伝わる、いつもの事なのだ。
「ん?あぁ、そういえばさっきからげぇげぇ言ってるな。」
女から手を離し、見えないよう隠して付けていたイヤホンから聞こえる声に、眼鏡の男は耳を澄ました。
《うえっ!はぁはぁ...おぇぇっ!》
そこから聞こえるのは、えずいて苦しそうな声と息遣い。
「大丈夫か?桜真。」
ジャケットの胸ポケットに刺したペンに向かって声をかけた眼鏡の男。
《最、悪...おぇっ!気持ち、悪い。》
「相変わらず女の声、駄目か。まぁ、確かにそれほどいいもんでもないけどな。」
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