第3話

年齢を重ねる毎に培われた絶大な威圧感と迫力、これまでの実績と実力で得られた信頼と尊敬で、部屋の奥に座している着物を身に纏った男は部屋の端までずらりと並ぶ数十人の男達に命を下した。



「草の根分けて探せ。必ず、見つけ出すんだ。」


「はい!!」



男達は自分達を信頼して鋭い眼光を向ける男に応えるように、一斉に声を揚げ、それぞれ部屋を飛び出した。



「牡丹、すまない。必ず、見つけ出してみせる。必ず...!」



男は膝の上に置いた震える拳をギリッと握り締め、"天帝"の呼び名に値する鋭い眼光を見せた。



「朔、何を考えてる?」



その様子を襖の影から見つめていた少年達がいた。

部屋にいる男を見つめ、問い掛けた眼鏡の少年。そして、その少年の横に並び、部屋へ背を向け広い庭をただ見ている"朔"と呼ばれた黒髪の少年。



「...どうせ言わなくても分かってんだろ、アキ。」


「まぁな。でも、かなり難しいと思うぞ。花王会ですら手こずってるらしい。」


「分かってる。でも何年かかったって必ず見つける。」


「そうか、...そうだな。」



黒髪の少年が鋭い瞳で前を見据えて歩き出すと、当たり前のように眼鏡の少年は後に続いた。



しかし数ヵ月後、ニュースで新たに伝えられたのは意識不明だった10歳の長男の死。



そして、妻と娘の行方はそれから10年が経った現在も、不明のまま───

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