断罪と、その後

第4話

「エレノア・カーマイン公爵令嬢、今日をもって婚約破棄させてもらう。新しい婚約者はメルシャン・バーミリオン男爵令嬢だ」


「理由をお聞かせください」


「お前がメルシャンにした悪事を忘れたとは言わせない。ここに833個の嫌がらせや暴行についてまとめた書面がある」


「……」



メルシャンを私から庇いながらアレックスは冷たく言い放つ。

私は証拠を突き付けられて二の句が継げぬフリをした。すべては段取り通りだ。



「メルシャンに嫌がらせや暴言を繰り返していたな」


「身に覚えのないことです」


「ひどいものでは他者を使い階段から突き落とそうとしたな。それについても突き落とそうとした実行犯からの証言が取れている」


「あの……エレノア様はそのようなことしないと思います」


(まずい、メルシャンが勝手に口を挟もうとしている)


私はアレックスに目で合図した。



「メルシャンはエレノアに酷いことをされても疑わない純粋な心の持ち主なのだね。メルシャン、君は騙されていたんだよ?」


「え? でも私……」


「メルシャンはエレノアを許したいのだね。なんて優しくて心の広い人だ」



口元を両手で押さえて明らかにメルシャンは動揺している。

アレックスはメルシャンの発言を封じるように抱きしめた。小声で何か囁いているようだ。


(危なかった~流れが変わるところだった)



「被害者のはずのメルシャンに許しを請われては仕方がない。エレノア・カーマイン公爵令嬢、メルシャンに謝罪の言葉を口にするならば、減刑してやってもいいぞ」


私はまず跪き、それから深々と頭を下げて謝罪をした。


「メルシャン・バーミリオン男爵令嬢、今までのご無礼申し訳ございませんでした」


「留置場送りは減刑し、三ヶ月の謹慎処分とする」


「謹んでお受けいたします」


私は淑女の礼をしてパーティー会場から退場した。

無事、婚約破棄が成立したのだった。

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