第16話

「これでも、人を見る目はあるんだよ」











ーーーそう言って目を細めたコウさんに、

思わずどきっとした。










「・・・なーんて、惚れちゃった ?」




ふっとコウさんが目もとを緩めた。





「ーーーっ!まさか!


・・・私、そんなに惚れっぽくありませんから。

コウさん、いつもそうやって女の人を誤解させてるんですか?」




なんてことだ!


天然王子じゃなくて、計算王子だったのか!





「あ〜・・・たまにね。


でも衣都ちゃんは真面目そうだから、簡単にはオチないだろうなぁとはすぐ思ったけど。」



「私、真面目に見えます?

彼がいないのは、不特定多数の男の人がいるせいだとかは思いませんか?」




今日、山田姐さんにへコまされた内容を突っ込んでみる。




「あはは!・・・そんなに男慣れしてないのに?

計算で顔は赤くならないでしょ。


でも誤解はされやすそうだね、衣都ちゃんって。遊んでそうには見えないけど、なんていうか高嶺の花?ーーー本当は弱いのに、1人で生きていけそうとか?」









・・・・・・胸の奥底にしまい込んだはずの古傷が、

チクッと痛んだ。



自分で聞いたくせに、

聞いたことを後悔するなんて。




「ーーそうですね。遊んではないですが私、理想が高いみたいで・・・友人にもダメ出しされてるんですけどね」



これ以上胸の内を覗かれたくなくて、

ははっと笑って誤魔化してみる。



「どんな人が理想なの?

重視するのは、顔?性格?年収?」


「うーん、そうですね・・・言葉にするのって難しいですよね。重視するのはもちろん性格じゃないですか?年収は気にしません・・・結婚を考えたことがないからかもしれませんが。

顔は・・・そりゃあ良いほうがいいですけど」



でもコウさんほどかっこよすぎるのは、

身が持たないかも。



「コウさんは彼女いるんですか?」



自然な流れで聞いてみる。



「おっ!俺に少しは興味持ってくれた?

今はいないよ。特定のカノジョはね」




ーーー野生王子か!


『僕』から『俺』に変わってるし。

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