第15話

「あ、コーヒーって飲める?」



買ってきた食料品などを袋からガサガサと取り出し、カウンターの奥に片付けているコウさん。



「砂糖とミルクを入れれば・・・っていうか

もう帰りますので大丈夫です!

お休みのところ、本当に申し訳なかったです」



そう言って席を立とうとすると、コウさんに

「待って!」と呼び止められた。




「時間潰しに少し付き合ってくれないかな?

一人で退屈なんだ。それとも、この後予定でもあった?」




目尻を下げたコウさんの姿に思わず、

「いえ・・・では少しだけ」と返事をしていた。



「ありがとう。すぐに入れるから待ってて」



コウさんはにっこりと微笑んだ。



もちろん予定はないし、こんな大人なイケメンとお茶できるなんて、ラッキーじゃないか!




・・・と、普通なら思うだろう。


でも男に免疫のない私は、こんな私で大人なコウさんの暇つぶしになるのだろうかと、不安な気持ちのほうが大きかった。








「ーーあ、そういえば名前聞いてなかったね。

何ちゃん?」



「野々村 衣都です」



「衣都ちゃんね。僕は梨田皇希ね」




ーーびっくり


やっぱり名前もそのまんま高貴だった。






「はい、どうぞ」



「いただきます」と、差し出されたカップを

ひとくち口につけてみて異変に気付く。





「ココア・・・?」






「コーヒー苦手そうだったし、甘いのならいいのかなって思ってココアにしてみたんだ。

大丈夫だった?」




「びっくりしました・・・

ココア、大好きなんです!

会社でも家でもよく飲むんです。

しかもこれ、すごく美味しいです!」




ちょっとした相手の反応も見逃さず、

さり気ない気遣いの出来る人。




ーー憧れるなぁ


私もこんな人になりたい・・・






「・・・すごいですね、コウさんって。

こんな気遣い、なかなか出来ないです」



「そんな褒められるようなことじゃないよ。

これでメシ食ってるところもあるし。

衣都ちゃんも十分、気遣いの出来る女性だと思うけどね」



コウさんの口もとは笑っていたけど、目はすごく真剣だった。

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