第17話

口に咥えたタバコにカチッとライターで火をつけると、ふぅっと煙を吐き出した。




「そのままでイイと思うよ、衣都ちゃんは。


ーーきっと良い人に巡り会えるよ」





そう言ってくれたコウさんの言葉は、


嬉しいと同時に酷く悲しかったーーー










「さてと!夕飯もついでに食べていきなよ!」



どんな流れなのか、突然そう言ったコウさんに「は?」と目を丸くした私。



「今から簡単なピラフを作らなきゃいけないんだけど、2人分も3人分も変わらないし。

衣都ちゃん一人暮らし?」



「そうですけど・・・」



「じゃあここで食べてっちゃったほうが、

楽なんじゃない?」




・・・それはそうなんだけど。




「ハイ!決定!すぐ作るから待ってて」



コウさんは楽しそうに、カウンターの奥の部屋に消えていった。




最初の印象ではかなり紳士だったのに、

実はかなり強引なヒトだったんだ・・・



まぁその強引さは、

決して嫌なものではないけれど。


最初の不安が嘘のように消えてるし。



気が付けばこのBarに来てからずっと、

コウさんのペースだ・・・






コウさんが奥に入ってしまって、やることがない私は店内を見渡した。


初めて来たときよりも、照明も明るくてお客も誰一人いない状態だから、はっきりと店内の様子がわかる。



L字型のカウンター席の他に、

大きさが様々なテーブル席が7席ほどある。


ムラに塗られた漆喰の壁に、

天井は落ち着いたゴールドだった。



奥にあるVIPルームらしき部屋の扉は、

今日も閉じられたまま。



気になる・・・



ーー中もきっと素敵なんだろうなぁ






さすがにコウさんがいない隙に勝手に見るのはマズイだろうと諦めた私は、鞄の中から携帯電話を取り出した。




メールが受信されている。


ーーサダからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る