第9話

「よくよく考えてみたら、こっちは結婚意識してるのに、これから夢を追いかける男はあり得ないよね。」




こんな短時間でいつの間に、

よくよく考えられたのだろう。



亮平君がいなくなったあと、2杯目のカクテルを飲みながらミッツが言った。



ミッツのイメージで頼んだカクテルは、

なぜか真っ赤だった。


情熱的に見えたのか?


それとも肉食系女子とか?




ミッツは気に入ったようで、2杯目も同じものを頼んでいた。まだ豹変する前に。





「そういえば衣都と今日会うって言ったら、

サダも久しぶりに会いたいって言ってたよ。

今日も誘ってみたけど、急だったから予定が入ってたみたいだけど。また近いうちに衣都にも連絡するって。」


「サダ、最近会ってないなぁ。仕事も忙しそうだもんね。私からもメールしてみるよ」



私の唯一の男友達であるサダとは同じ大学で、卒業してからもたまに会っていた。


営業の仕事に就いたサダは、ここ最近忙しいらしく一ヶ月ほど連絡もしていなかった。


ミッツと違って私はマメな性格ではないので、自分から連絡するより待つ方が多い。

ただでさえ数少ない友達は、大切にしなきゃとも思うんだけどね。







「私、お手洗い行ってくるね」


私は亮平君とコウさんとは別の、もう一人の若い男のバーテンダーに場所を尋ねてから席を立った。











「すごい」




思わず声が漏れるほど、化粧室まで本当に素敵だった。アールデコのランプが垂れ下がり、

ベージュとブラックの柄の壁紙がすごくシックだ。



柄はよく見ると、


「蓮の花・・・?」




このBarの名前に因んだものだろうか。

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