第6話

「うちのお店は初めてですか?」






カクテルを飲み始めてしばらくたったあと、

金髪の彼がカウンター越しに再び話しかけてきた。



「はい、初めてなんです。前から気になっていたんですけど、ちょっと入りにくくて。」



そうハニカミながら答えたミッツだけど、なんの抵抗もなく入店したのはどこの誰だよ?



「あはは!よく言われます。わざと入りにくくしているところもあるので。でも一度来て頂ければ、次回からは大丈夫でしょう?ここは常連さんが多いんですよ。」


「わざと入りにくく・・・ですか?」



不思議に思って私が尋ねると、彼は少し言いづらそうに答えた。




「オーナーの希望なんですよ。繁盛させるより、常連さんが寛げる場所にして欲しいって。でも結局はコウさん目当てで来られる方が多くて、意外と繁盛しちゃってるんですが」




「コウさん?」



「このBarの店長です」




そう言って彼は、店内の端にあるVIPルームらしき部屋から、ちょうど出て来た男性を指差した。見た瞬間は暗がりで顔がよく見えなかったけど、カウンターに入って来たときにライトで照らされた顔には驚いた。







ー確かに。




綺麗な二重の目に、鼻筋の通った端整な顔立ちに、ふわっと少しパーマのかかった長めのヘアは、高貴な王子様を思わせる。


身長も180cmはあるだろう。



これは女性客が増えるはずだ。




「女性だけではないんですよ。」



ふっと、考えを見透かしたかのように金髪の彼が笑った。




「もちろん女性のお客様の方が多いんですけど、コウさんは男性のファンも多いんです。話を聞いて欲しくて通われる方も多くて。」



その声は、なんだかとても楽しそうだった。





「あなたも、コウさんが好きなんですね」





金髪の彼は目を見開いた。


気付けば思ったことを口に出していた。

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