第60話

「あのー、ラブラブなところ申し訳ないけど、亜衣様との待ち合わせ時間が過ぎるから、行こうか?」



フリージャーナリストの亀田透が様子を窺いながら声をかける。



「ああ、亀田さん、いたのですね。」


ルキはふわりと笑顔で亀田に微笑んだ。

まるで、天使の微笑みだ。



「はい。

1時間ほど前から。

ルキさんの頼みですからね。」


ニコニコとルキに営業スマイルを振りまく。


「さすが、心強いお方だ。

じゃ、案内してもらおうかな。」



「はい、このホテルの最上階の部屋に亜衣様がお待ちです。」



「楽しみだな。」



ルキは、真緒の顔を見て笑う。

恋人らしく振る舞う。

そう、亀田の前でも、亜衣の前でも演技をしなければいけないのだ。

決して、ルキが吸血鬼だとバレてはいけない。




「うん、楽しみだね。

私達の未来を占ってもらうんだもん。」



ルキは真緒の手を取り、歩き出す。


握る手からは優しさが伝わってくる。



この手…安心するな。

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