第55話

病院の個室で2人は向き合って椅子に座っていた。


カレンは眠っている。


「来栖慶…元の名をクルス・ケイ。

吸血鬼の中でも能力が高く、国王の実の弟の息子だ。」



「え!なんで、そんな人がこの世界に?」



「クルス・ケイは国王の実の弟に仕える、吸血鬼の軍隊を率いている長だ。

俺がこの世界に来るときに、俺の行動を阻止しようとしてきて、襲撃してきた。」


「じゃあ、クルス・ケイの仲間たちに襲われたのね!」


「そう。

クルス・ケイの率いる軍隊は吸血鬼界でも優秀で強い…

国王軍も勝てるかギリギリのラインだ。」


「でも、なぜ、あの人だけしか居ないの?」


「この世界に来るときに、襲ってきた奴らは大半は倒したんだが、クルス・ケイだけは無理だったみたいだな…

やつは別格に強く、残忍だ。

致命傷は与えたんだが…それが治っていた。」


「つまり、この世界の人間の血で回復した…とか?」


「多分そうだろう…俺もそうなっても可笑しくなかったが、真緒のおかげで、それは無い。」


「じゃあ、やつが連続殺人鬼!」


「そういうことになる…

真緒…時間がない。

急いで奇跡の血を探さないといけない。」


「なぜ?」


「このままでは、真緒が危ない…。」


「え?」



なぜ、私が?







「言ってなかったけど…真緒の血は特別だ。」



「どういう事?」


「真緒の血には不思議な力があるんだよ。」


「え??」


「吸血鬼達にとっては理想の血…

希少価値が高い”生命の血”の持ち主なんだ。」


”生命の血”ってなに?


奇跡の血やら、色々登場して頭が混乱してくる。



「これを持つ者は、吸血鬼の世界では王族でも、10年に1度しか見つからない。

それくらい希少性が高い血だね。

この血を持つ者は、回復能力を増進させ、癒やしの力で、怪我などを治すことができる。」


「そんな血を持った覚えがないんだけど…」


「俺もこの世界に居る事にビックリしたけどね。

そして、この血には吸血鬼の能力を高める効果もある。」


「だから、最近、いろんな事が出来ていたのね!」


「その通り。

真緒が”生命の血”の持ち主とバレた以上、クルス・ケイは真緒を狙ってくる。

”生命の血”を飲んで、俺を殺す能力を手に入れようとするだろう。」


「ルキには死んでほしくない!

奇跡の血を手に入れて、国王に届けてほしい。」




………真緒の血が狙われているのに、俺の心配をしているのか?

自分のことは心配しないのか?




ルキは困ったような顔をする。

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