第53話

「おや…この炎は…」




来栖は自身の体が燃えていることに気付いた。




そして、真緒が自分の手の内に居ないことに気付く。



「ル…キ…王子…か…。

さすが、速いですね。」



一瞬の出来事で、ルキは来栖から真緒を引き離した。



「ル……キ……」


「もう喋るな。」



ルキは真緒を大切に抱きかかえていた。

抱きかかえる手に力が籠る。



「なんで…此処が?」


「血の匂いだよ…

真緒の濃い血の匂いが家まで漂ってきた。

だから、急いで血の匂いを辿って来たんだ!」


「はは…肩を斬られたのも無駄じゃなかったてことか…」


真緒が力なく笑う。



「それよりあいつは…



あの時、とどめを刺しておくべきだった!」



怒りに満ちた声で言い放つ。

ルキの来栖を見る瞳は真っ赤に燃えているようだった。



依然、燃えている自身の体には気にすることなく、来栖は笑う。




「おやおや…これは第3王子のルキ様ではありませんか。

王子様らしい登場の仕方ですね。」


「来栖慶…いや、クルス・ケイ。

真緒にしたこと、後悔させてやる!」


「こんなに早くバレるつもりはなかったのですが…

ヤバいですね…瞳の色が深紅の赤に染まっている…」



真緒を安全な所に下ろす。



「ルキ…?」


「安心して、すぐに終わらせるから。」


ルキは不安そうな真緒の頭を撫でる。


そして、来栖をにらみつける。


獲物を狙う目だ。



「クルス…真緒にしたこと、後悔させてやる…。

炎呪縛!!」



ゴウっと音を立てながら炎の縄が、来栖の体を縛り上げていく。


「クク…厄介な能力ですね!」



来栖は縄を解こうと藻掻く。



ルキは手を広げると、手のひらから炎がほとばしる


そして、炎を鋭い剣の形に形成し、それらが何本も現れる


それらの炎の剣は瞬速で来栖に向かっていく。



「速すぎて避け切れない!」



グサッ!!グサッ!!!


「う”ッツ…」


炎の剣は何本も来栖の体に刺さった。


その瞬間、刺さった剣達が不気味な音を立ててゴウゴウと燃え盛っていく。



「ルキ…凄い…なんて力なの…」


真緒はルキの力を初めて目の辺りにした。


「クルス…燃えたまま消えてもらう!」


ルキの瞳が赤に光る。

その色は赤黒い色になっていた。



「おー…これは良い炎ですね…

はあ…感じます…ルキ王子の怒りと憎しみが…」



来栖の体は燃え盛り、赤黒い炎に纏われていた。

そして、来栖の体がどんどん灰となっていく。


微かに来栖が笑った。


「でもね、ルキ王子…力を完全に回復していないですね?」


「なッ!!」


「おや…やはり、図星ですね。

この炎では、簡単に逃げれますよ!!!」



来栖はバサッと翼を広げる!

その拍子で、炎の縄が解けた。


「なに!?」


来栖は灰になった体を翼で庇いながら、高速で浮上する。


「させるか!」


来栖に向かって炎を放つ。


ゴウっとルキの放った炎が来栖の体に当たったが…


「ああ…この炎を食らうのは2度目…

しかし、私が思うに、ルキ王子の力は十分の1まで低下していますね。

そんな攻撃では、私は殺せませんよ…」


アハハと来栖はルキを挑発するように笑う。


「今日のところは引き上げましょう。

しかし、私は佐藤真緒さんを手に入れ、力を手にし、ルキ王子…

貴方を殺し、奇跡の血の入手を阻止する!いや、奇跡の血を抹消する。

それがあのお方より使わった私の使命ですからね!!!」



来栖はバサッと彼方に翼で飛んでいった。

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