第52話

その頃、真緒は遠くから聞こえた、カレンの叫び声らしき声に不安になっていた。



「まさか…カレンに何かあったんじゃ…」


行くか…

行くべきじゃないか…


でも、カレンに何かあったら大変だ。

やっぱり、様子を見に行くべきよ。



真緒は肩を庇いながら、立ち上がった。




そして、残り僅かな力を振り絞って、歩く。



声のした方へ…








ーーーーーーーーーー



芳醇な香りを漂わせ、獲物が近づいてくる…


ああ…この血の匂いは…



「…どうやら、ご丁寧に、此方に近づいてくるようだ。」


来栖は笑みを隠せない。




暗闇から真緒が来栖の前に姿を現した。



「来栖…これは…」


あたりを見渡し、真緒は絶句する。


「カレン!!」


カレンが横たわっている…

嘘…やっぱり行かせては駄目だった。



真緒の目から涙が溢れてくる。


「カレン、カレン、しっかりして!!!」


真緒はカレンに近づこうとしたが、来栖に阻止される。


「おっと…いけませんね。

これ以上、時間をロスさせるわけにはいけないんです。」


「来栖…許さない!」


「はあ…たかがひ弱な人間の癖に、何ができるのですか?

あなた達はあまりに無力だ。」


やれやれと来栖はため息をつく。


「荒いですが…仕方ありません。」


ガッ!


来栖は真緒の首を手で掴む。


ギリギリと力を強めていく。


「ぅっ……なに……す…」


真緒は苦痛に顔を歪ませる。


「はあ…ギャアギャア煩いので、このまま気絶してもらいましょうか。」



呼吸が出来ない…

意識が朦朧としてくる





ルキ…



ごめんなさい…




真緒の目がどんどん閉じていく。


















ゴウッ!!!



赤い炎が真緒の瞳に映る。



赤い炎…?



なぜ…?



幻でも見ているのだろうか?



「真緒!!!」



誰の声?



「真緒!しっかりしろ!」



幻か…


まさか…


此処に居るわけがない…

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