第50話

「佐藤真緒さん、アナタを殺そうと思いましたが…

予定変更です。

一緒に来てもらいます。」




来栖が真緒に近づき、真緒を抱えようと手をのばす…



咄嗟に真緒は起き上がり、近くに落ちてあった古びた長方形の看板を手に取り、



「冗談じゃない!」



叫び、来栖の顔めがけて看板で殴る。


看板が派手な音を立てて、来栖の顔にヒットする。



「ガハッ!!」


殴られた衝撃で来栖は派手に後ろに倒れ込む。

倒れるのを見ると、カレンの手を引っ張る。




「カレン!逃げるわよ!!」


「うん!!」


一瞬の隙をついて、カレンの手を引くと来栖から逃走する。


血を流しながらも真緒は走り続けた。


そして、物陰に隠れる。






ーーーーーー


来栖はゆっくりと起き上がる。


真緒の流血した血の後を満足そうに見つめ、ほくそ笑む。


「ああ…やはり、この血は希少性が高い…

是非とも欲しい…

あの血を飲み続けることが出来て、この体に入れたら…

いずれ、あの人を殺せる力が手に入るかもしれないな。」


しかし、少し考える仕草をする。


「でも、このままでは、私が傷つけた傷口のせいで、佐藤真緒さんの血がなくなってしまいますね…。

急がなければ…ククク。」


バサッと豪快な音をたてて、翼を広げる。


そして、一瞬で空に羽ばたく。


「どこに隠れていようと空から見つけてあげますよ…

佐藤真緒さん!」



ーーーーーーーー



「はあ…はあ。」


真緒の肩からは留まることなく血が流れている。


「真緒、大丈夫?」


カレンは応急処置にハンカチで真緒の傷口を押さえるが、あまり効果がない。


「血が止まらないわ…早く病院に行かないと…。

ごめんなさい…真緒の忠告を聞いていれば今頃、こんな事にはならなかったのに…」


「いいのよ…カレンが無事でいれば…

多分、隣街の事件も奴の仕業かも…」


「嘘…

じゃあ、本間典子ちゃんも?」


「多分、来栖って奴にやられたんじゃないかしら…

奴の目的は血みたいね…。」


「血って何のために…?」


「分からないけど…でも、翼が生えているって、人間じゃないよね?」


「うん…人間には翼なんて生えないよ。」


「……………吸血鬼…?」


真緒はぼそっと言う。


「え?何か言った?」


「まさか…なんで?

ルキしかいないと思ったけど……

瞳も赤くないし…

でも、凶悪な感じは来栖のほうが高い…。」



一人ぶつぶつとしゃべる真緒。


「真緒…大丈夫?

来栖って人が何者かは分からないけど、助けを呼んだほうが良いかも!

例えば、警察とか!

真緒は此処で隠れてて。

私、助けを呼んでくる!」



「一人では駄目よ…

危険だから…」


「でも、真緒をこれ以上歩かせるわけにはいかないわ!

私はまだ動けるから大丈夫!」


カレンは笑っていった。

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