第49話

真緒が先頭を走る。



「ねえ、真緒、どういう事!?」


カレンが走りながら声をあげる。



「カレンのことが心配で、付けてきたの!

来栖って人は怪しい気がして!

そうしたら、刃物が見えて、カレンを刺そうとしてたの!!」


「そんな!!!

でも、普通に紳士だったけど!!」


「紳士かもしれないけど、あの男の人は危険よ!!

とりあえず、今は逃げないと…!!」



裏路地は道が長く、中々、表通りに出ない。


せめて、人の多い所に出れば…



「佐藤真緒さん!!!

鬼ごっこなんて愉快ですよー!!

せっかく、カレンさんを殺せそうだったのに!

邪魔をしないでもらいたいですねー!!!」


後ろから、来栖の声が迫ってくる。


真緒は後ろを振り返る。




来栖は猛スピードで追いかけてくる。


速い!!





見ると、来栖の背中に翼が生えていた。



翼!!!!???




「ヒイッ!!来栖さんに翼が!!!」


カレンは恐怖に顔を歪める。


「貴方、何者!!?」


真緒は驚愕して目を見開く。



「言う前に…佐藤真緒さん、貴方の血を頂きましょうかぁ!!!!」




来栖が目にも留まらぬ速さで鋭利な刃物で、真緒の肩を切り裂く。



切り裂かれた肩から、プッシャーっと鮮血が舞う。



「ッツ!!!」


真緒は切り裂かれた衝撃で、転ける。



「真緒!!

しっかりして!」


カレンは転けた真緒に駆け寄る。

そして、来栖に向かって…


「来栖さん、なんてことを!

あなた、正気ですか!?」


「…なーに…佐藤真緒さんの血を頂いた後、カレンさんの血も…」


来栖はカレンに近づく。


「頂いちゃいますから、怒らないで下さい。

ね?

綺麗に一滴も残らず飲み干してあげますよ…くく。」



来栖は悪魔のように不気味に笑う。


「狂ってる…。」


カレンは人間の本能で危機を感じていた。


震えるカレンを気にもせず、来栖は倒れている真緒に近づく。



「うーん…血の匂い…

芳醇な血が…

はは…この世界に来てよかった!」


スーハースーハー息を吸い込み、血の香りを楽しむ。


「まずはテイストですね。」



真緒の肩に触れ、指でなぞり、血を手に取ると、ペロッと舐める。




「これは!!!!!??」



来栖の顔が嬉しさをかくせず、狂気に満ちた笑みに歪む。


「佐藤真緒さん…ククッ……この血…

ああ…分かりましたよ…だから、アナタが選ばれたのか…

この血はあの世界にはない代物…

力がみなぎって…ははッ…」


来栖は一人で笑っている。

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