第46話

バッチっと一人の人と視線が合う。




男……?


真緒が怪訝に見ると、その男が笑ったような気がした。


そして、その男が真緒の方に近づいてくる。



え?近づいてくる?


真緒は目が離せないでいた。



そして、背のスラリとした、スーツ姿の男が真緒たちの目の前に立った。


「…???」


真緒はジッと男を見る。


「こんにちは、佐藤真緒さん。」


男は低い声で丁寧に挨拶をする。


「……?」


「真緒…知り合い?」


カレンは首を傾げて言った。


「えー…と…。」


「おや…?

お忘れになってしまったかな?

前に貴方が落としたハンカチを拾った…」


「あ…来栖慶さん??」


「そうです。

先日はどうも。」


「こちらこそ、ありがとうございました。

来栖さんはこんなところで何を?」


「会社がこの辺にあるので、ランチを…。」


「へー!来栖さんはなんのお仕事をされているんですか?」


カレンがすかさず来栖に質問する。

でたでたと真緒はげんなりしていた。



「そこの純友銀行で働いていますよ。」


「えー!純友銀行ってめちゃくちゃ有名じゃないですかー!」


カレンは明るい調子で言う。


「そう言っていただけて光栄ですね。

よかったら、仕事が終わった後に食事でもどうですか?

この近くに素敵なフランス料理のお店があるんですが…」


来栖がカレンを見つめながら言う。


「えー私ですか!どうしよう~。」


「ちょっと、カレン…彼氏がいるんじゃ…。」


真緒はカレンを止めようとするが…


「彼氏は別!」


「でも、この来栖って人、怪しいし…私もよく知らないのよ…。」


カレンの耳元で真緒は言う。


「そうなの?

でも、真緒のハンカチ拾ってくれたんでしょう?

いい人そうじゃない!」


「そうだけど…。」



「決めた!来栖さん、行きましょう♪」


「良かった。

美人に断られたらどうしようかと思いましたよ。

今日の19:00に駅前広場に集合でどうですか?」


「はい!わかりました。」


「では、また…。」


来栖は軽やかに去っていく。





「なんか、来栖さん、大人の洗礼された男って感じで素敵かもー!」


「その前に彼氏とか、黒羽根さんはどうしたの?」


「ん?仲良くしてるよ。」


「はは…。」



ん?

出入り口に居た来栖が真緒を見て、ニヤリと笑った。

その笑みに真緒は体の底からくる寒気を感じる。


やっぱり、あの来栖って人、不気味…。


カレンが心配になってきた。

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