第45話

真緒は何時ものように満員電車に乗り、会社に出勤する。



「真緒ー!おはよー!」



会社の前でカレンが声をかけてきた。



「カレン、おはよう。」


軽く挨拶をする。


「ちょっと、大事件!」


「え?なになに?」




カレンは真緒をビルの隙間に連れ込み、コソコソと耳打ちする。




「企画課の本間典子ちゃんが、数日前から行方不明らしいの!」


「えー!!

本間典子って、カレンと仲良かったよね?」


「そう!最近、無断欠勤が続いていて、会社の上司が家まで様子を見に行ったらしいんだけど…

誰も居なかったらしいの。

で、親族に連絡をとって、親族からも連絡してもらったんだけど、連絡が取れなかったらしいの!」


「それって、行方不明って事!!?

でも、真面目な子だったよね?」


「そう、真面目な子で、今まで無断欠勤なんてしたことなかったのに…

心配だよ。」


カレンは悲しそうに表情を歪める。




「彼氏と逃避行とか?」


「なんでよ?」


「借金取りから逃げ出したとか?」


「うーん…事件に巻き込まれていないといけないんだけど…」


「そういえば、隣の街で女性を狙った殺人事件が何件か起こっているとかニュースで言ってたよ。」


「えー…まさか…ねー…。」


「そんなわけ無いか…この続きはお昼のランチでどう?」


「うん!真緒、また後でね!」



カレンはバタバタと会社に入っていった。




「何もないと良いんだけど…。」



真緒は言いしれぬ不安を感じた。















ーーーーーーー



お昼になり、真緒とカレンは会社近くのイタリアン料理が美味しいお店に来た。



中に入ると、店内はお昼時なので、サラリーマンやOLで賑わっている様子だ。


店員に案内されて、テラス席に座る。

そして、早速注文する。


「私、和風パスタセットをお願いします!」


「真緒珍しい…私はトマトクリームパスタセットで。」


「かしこまりました。

少々お待ち下さいませ。」


注文が終わると、2人は一息つく。



「はあ…なんか、今日は仕事に身が入らないなー…。」


カレンは椅子にもたれ掛かり、ため息をつく。


「今日も本間典子さん、出勤しなかったの?」


「そうなのー。

本当にどこに行っちゃたんだろう…?」


「無事に見つかると良いけど…。」


「あ…そうだ!この前のイケメンはどうなのよ?」


「いきなりどうしたの?」


「ほら!柊木さん達と飲み会したときに、真緒のこと、迎えに来てたじゃない!!」


「あー…彼ね…何もないよ!」


「エエエエ!!??

そんなわけないでしょ?

真緒のこと、愛おしそうにお姫様抱っこしてたし。」



「ーッ!ゲッホ!!」


真緒は飲んでいた水を吐き出そうになった。


「大丈夫?」


「うんっ!

彼とは本当になんにもないの。

彼は訳があって、私の家に居候しているだけ。

それ以上でも以下でもないの。」


「へー。

家出青年とかー?」



「まあ、なんかね…。

身寄りがないから、私の家で仕方がなくね…はは…。」



そうこうしているうちに、料理が運ばれてきた。



「美味しそう~!」


「ほんとー!」


イタリアン料理に自然とテンションが上がる。

パスタを黙々と食べる。

そして、半分ほど食べて、ひと休憩する。

カレンはフォークを持ちながら、話し出す。


「でもさ、彼、真緒のこと、大切に思ってそうだったよ?」


「ん?

気のせいだよ…

それに、彼は恋愛とかしている場合じゃないんだよね。

彼の人生がかかっているから。

私も、彼のお手伝いをしているから応援している感じかな…。」


「なにそれ?

人生かけているから恋愛はしたらいけないの?

私には理解できないな…。」


「まあ…事情があるのよ。

それに、彼はいずれ、遠い所に帰らないといけないから…。」


「あ!!やっぱり、海外の人なの?」


「えー…うーん…まあ。」


言いにくい質問が続く。

早く終わらないかなと、視線をカレンから周りに移すと…

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