第36話

ルキから疑いの目が感じられる。



「その、柊木って奴らが信用できるか分からないでしょ?

真緒をどこかに連れて行こうとしてたし。」


「柊木さんは私を送ろうとしたんじゃー…。」


「違ったら?」


「待って。柊木さんは会社の先輩だし!

ルキ、どうしたの?

早く帰ろうよー…」


「なんで言い切れるんだよ?

真緒がもし危険な目にあったら…ー。」



「私は大丈夫!

だから、安心してー…。」


真緒はルキの顔に手を添え、ルキの目を真っ直ぐ見て言う。


そして、


「何が起こっても私は驚かないって決めたの。

受け入れて、それにうまく対処をする。

頑張るから。」




ニッコリと真緒は笑った。





その笑顔を見た瞬間、


ズキッ!!


ルキの脳裏に真緒の笑顔と誰かの笑顔が重なる。



なんだコレ…


まさかな…。



「…っ!」


ルキの顔が歪む。



「ルキ、どうしたの?」


ルキの様子が可笑しいことに気づく。


「なんでもない…。」


「あ…血飲む?」


「…。」


真緒は自分の首筋を差し出す。

痛みに耐えるために目をつぶる。



「やっぱり、無防備過ぎ…。」



ルキは言ったー。









ルキの息遣いが聞こえー


そして、唇に軽く感触を感じた。


優しいその感触に真緒は驚き、目を開けた。


ルキの顔が目の前にあった。





え…なにが起こっているの?

血を吸われているんじゃない?

なんで………キスなの?

ルキ?





わけが分からずに真緒の頭が混乱する。

鼓動が速くなり、張り裂けそうだ。



ルキは真緒の目を見つめた。


しばらくして、ルキの顔が離れる。



「………真緒、無防備過ぎ。

ちょっとは警戒心を持ってよね。」


「え…………あっ!

そういうことね!

ははっ…隙を突かれちゃった。」


「早く帰って血をちょうだい。」


「そうだね。

早く帰ろう。」



ルキは冷めた表情で言うと、体を道路に向け、歩き出した。



ルキのなんでもないという様子に、真緒のドキドキも強制的に現実に戻される。



真緒もルキの後を追う。









刻は過ぎていく。

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