第34話

「はいー…?」


柊木は咄嗟に返事をする。


「えっ!!」



カレンは声を掛けてきた男を見ると、限界ギリギリまで目を見開く。



「…美しい…。」


黒羽根は男の美しさに惚れ惚れした。




3人は突然現れた男に目を奪われていた。


男は儚げな美しさもあり、妖艶な感じも兼ね揃え、居るだけでその場が輝き放っている不思議な魅力を放っていた。



「突然声を掛けてすみません。

その、寝ぼけている女は俺が連れて帰ります。」



男は真緒を指差しながら言う。




3人は顔を見合わせる。


こんな知り合い、真緒に居たか、カレンは頭を働かせるが、検討がない。



「それは佐藤さんの事を言っているのかな?」


「真緒のことです。さっき、電話で迎えに行くといったんですが…。」


「あ!もしかして、佐藤さんと話していたのって、君のことかな?」


「はい。」


「うーん…しかし、知り合いという確証がないまま、このまま見ず知らずの君に託すのもなー…。」


柊木が男に向かって鋭い視線を投げる。

少し疑惑の目線も入っていた。



「安心してください。

真緒とはとっても仲良しですから。」


「えーーっ!!!」


カレンは悲鳴にも似た声を上げる。


「真緒、そんな存在がいるなんて全く言ってなかったよ!」


「これは面白い展開になってきたな。」


黒羽根は完全にこの状況を楽しんでいる様子だ。



男はスタスタと優雅に歩くと、真緒に近づき…



「真緒、一緒に帰るよ。」


男は真緒に向かって声をかける。



「!!はい!!!」


その声に真緒はすぐさま反応する。


そして、顔を上げると、顔を真っ青にした。


「るるるる…ルキー!!??」


「やっと目が覚めた?」


「なんでここに!?」


「言ったでしょ、俺を見くびるなって。」


「ごめんなさい。」


「それより、何?

男の人に支えられないといけないまで飲んでたの?」


「えー…柊木さん!」


真緒は自分が柊木に支えられていると気付く。


「ごめんなさい!私ってなんてことを!」


焦った様子で真緒は慌てて、柊木から距離を取ろうとする。



「佐藤さん、そんなにいきなり動いたら!」




柊木の静止も聞かずに、慌てて距離を取ろうとしたためか、真緒の体が倒れかける。



「佐藤さん危ない!!」


「真緒!!」


柊木とルキの声が重なる。



「あっ……。」



私、終わった・・・・・・・・。



やばいと思ったのか、真緒はやがて来るであろう衝撃に身を強張らせる。

そして、目をつぶる。

















「ん…?」


しかし、いつまで経っても体に衝撃が来ない。


不審に思った真緒は恐る恐る目を開ける。





目を開けた視界は、ルキの顔でいっぱいだった。

どうやら、ルキにお姫様抱っこをされたみたいだ。



「真緒って、危なっかしいな。」


ルキは呆れた様子で言う。


「ルキ…ありがとう。」


「皆さん、真緒の介抱ありがとうございました。

失礼します。」



ルキは大切なものを扱うような仕草で真緒をお姫様抱っこしたまま、真緒のバックを手に持つと、優雅に歩いていった。




「え…はい。

真緒、また明日ー…。」


「佐藤さん、また明日…。」


「またねー…。」


3人は状況がよく読めないまま、真緒たちを見送るしかなかった。

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